1 ポイントは何か?
うつ病自殺
2 何があったか?
Fは、平成3年8月27日午前6時ころに帰宅し、弟に病院に行くなどと話し、午前9時ころには職場に電話で体調が悪いので会社を休むと告げたが、午前10時ころ、自宅の風呂場において自殺(い死)していることが発見された。
遺族が会社に補償を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審 東京高等裁判所
安全配慮義務を認めたうえで過失相殺、素因減額した。
⑵ 最高裁判所
過失相殺、素因減額を容認できないとして原判決を破棄し差戻した。
4 コメント
現実の労災認定はそれほど簡単ではない。労働者、被害者は粘り強く申し立てる必要がある。
(引用条文・判例)
○ 【要旨1】原審は、右経過に加えて、うつ病の発症等に関する前記の知見を考慮 し、Fの業務の遂行とそのうつ病り患による自殺との間には相当因果関係があると した上、Fの上司であるL及びMには、Fが恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったことにつき過失があるとして、一審被告の 民法七一五条に基づく損害賠償責任を肯定したものであって、その判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
○身体に対する加害行為を原因とする被害者の損害賠償請求において、裁判所は、加害者の賠償すべき額を決定するに当たり、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、民法七二二条二項の過失相殺の規定を類推適用して、損害の発生又は拡大に寄与した被害者の性格等の心因的要因を一定の限度でしんしゃくすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第三三号同六三年四月二一日第一小 法廷判決・民集四二巻四号二四三頁参照)。この趣旨は、労働者の業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求においても、基本的に同様に解すべきものである。しかしながら、企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働 者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。しかも、使用者又はこれに代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う者は、各労働者がその従事すべき業務に適するか否かを判断して、その配置先、遂行すべき業務の内容等を定めるのであり、その際に、各労働者の性格をも考慮することができるのである。したがって、【要旨2】労働 者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに 当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因としてしんしゃくすることはできないというべきである。
(本件判例を引用する判例)
平成23(受)1259 解雇無効確認等請求事件
平成26年3月24日 最高裁判所第二小法廷 判決
(上告人の損害賠償・見舞金請求敗訴部分破棄差戻し、その余の上告棄却、棄却部分の上告費用は上告人負担)
原審 東京高等裁判所
集民(最高裁判所裁判集民事編) 第246号89頁
裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
084051_hanrei.pdf (courts.go.jp)
判例
最高裁平成10年(オ)第217号,第218号同1 2年3月24日第二小法廷判決
原審 東京高等裁判所
民集54巻3号1155頁参照
裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan
052222_hanrei.pdf (courts.go.jp)
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