【精神障碍と職業選択の自由:交通整理業務警備員が保佐人選任を受け、当時法改正前の欠格事由により退職した事件】

1 ポイントは何か?

  • 憲法による職業選択の自由の保障。
  • 精神の障害により保佐が開始されたことは、当然に警備員の交通整理業務の能力に支障があるか。
  • 国の法改正責任。

2 何があったか?

交通整理業務警備員が、令和29年2月23日、財産管理能力の補充のために、家庭裁判所により保佐人選任を受け、当時警備業法改正前の欠格事由により退職した。

当時、警備業法は、破産者で免責決定を受けない者だけでなく、成年被後見人及び保佐人も、警備員の欠格事由としていた。

成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第37号、令和元年12月14日施行、一括整備法)により、成年被後見人及び保佐人は、警備員の欠格事由から削除された。

(衆議員HP第198国会制定法律一覧)

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19820190614037.htm

(参考:厚労省HP:成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律の概要)

https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000567862.pdf

3 裁判所は何を認めたか?

 警備業法が保佐人を警備員の欠格事由路していたことは、憲法22条1項の定める職業選択の自由に反し、国は、遅くとも平成22年頃にはそのことを認識することができたとして、国に対し、元警備員が退職によって精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法に基づき、金50万円の損害賠償義務を認めた。

4 コメント

 家庭裁判所による成年後見人や保佐人の選任は、本人の財産管理能力の補充のためである。本人が交通整理業務に従事する能力は、交通安全についての一定水準以上の認識能力と交通整理についての必要な技術塗力が備わっていればよく、必ずしも本人の財産管理能力が十分であることを必要とするものではない。

(参考:成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議)https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/naikaku2527332128EBBD2D49258401001BC9CB.htm

(参考:成年被後見人の選挙権の回復等のための 公職選挙法等の一部を改正する法律 新旧対照表)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000233152.pdf

地位確認等請求控訴事件、同附帯控訴事件

名古屋高等裁判所 令和4年11月15日判決

(原審 岐阜地方裁判所令和3年10月1日判決)

(裁判所HP裁判例検索)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/666/091666_hanrei.pdf

愛知県弁護士会会長声明令和4年11月24日

(愛知県弁護士会HP意見声明)

https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2022/11/post-79.html

 

 

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