最高裁判所令和5年(受)第906号 地位確認等請求事件 令和6年10月31日 第一小法廷判決(破棄差戻) 原審大阪高等裁判所
1 ポイントは何か?
労働契約の期間を無期限とする延長請求の可否。
2 何があったか?
Aは、O大学の講師であるが、労働契約の期間は当初3年間で、契約更新は1回に限るというものであった。Aは通算6年経過した日の翌日を初日とする無期労働契約の締結を求めたが、同大学は拒否した。
そこで、Aは、同大学を被告として、通算6年経過もAが同大学の大学講師の地位にあることの確認を求める訴えを提起した。
Aの同大学における講師職が多様な人材の確保が特に求められる研究組織に属するもので有期労働契約であれば、1回更新終了までの通算契約期間が10年を超える場合は、期間満了の翌日から当然に無期労働契約となる新たな契約の申し込みができる(大学の教員等の任期に関する法律7条、5条、4条及び労働契約法18条1項)。
同大学は、Aの同大学における講師職が多様な人材の確保が特に求められる研究組織に属するものであり(任期法4条1項1号)、Aの通算契約期間は10年に満たないので、同大学に対して無期労働契約の締結を求めることはできず、Aは通算6年経過後はもはや同大学の大学講師の地位にはないと主張した。
AはAの同大学における講師職が多様な人材の確保が特に求められる研究組織に属するものではないと主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
大阪高等裁判所は、Aの主張を認め、Aの勝訴とした。
同大学が上告した。
最高裁判所は、同大学の主張を認め、大阪高裁の同大学敗訴部分を破棄し、同部分を大阪高裁に差し戻した。
4 コメント
労働基準法19条第2号に該当してAの無期労働契約の締結の請求が有効と認められる可能性はあったのではないか(厚生労働省「無期転換ポータルサイト」を参照)。任期法には、労働基準法18条1項の特例はあるが、同19条を排除する規定はない。そこは問題にならなかったのか。
また、そもそも上告受理申立理由に当たる法令解釈の重要事項(民事訴訟318条1項)ではなく事実誤認の有無の問題ではなかったか。大阪高裁での再審査の結果が待たれる。