令和5(受)1583 発信者情報開示等請求事件
令和6年12月23日 最高裁判所第二小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所
093648_hanrei.pdf
1 ポイントは何か?
被害者の権利救済の必要性と通信者等のプライバシー、表現の自由と通信の秘
密の均衡。
2 何があったか?
令和3年4月頃、未特定の投稿者BがプロバイダCを経由して5回行ったイン
スタグラムの投稿で名誉棄損されたAが、Bに対する損害賠償請求をするため
に、Cに対しBの発信者情報の開示を求めた。
AがCに対しBの発信者情報の開示を求める根拠法として平成13年制定の特
定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法
律があるが、同法は令和3年に一部改正され、改正法は令和4年10月1日施
行された。本件では、改正の前後のいずれが適用されるかが問題になった。
Bは、本件投稿後に10回のログインをしていたが、Cの通信記録で特定でき
たログインは8件であり、そのうち1件が時間的に本件投稿にもっとも近いも
のであった。Aは祖の8件の発信者情報をすべて開示するよう求めていた。
3 裁判所は何を認めたか?
大阪高等裁判所は本件投稿やログインの当時の法である改正前の法を適用した
が、最高裁判所は改正後の法を適用した。最高裁判所は、本件法改正は改正前
の法の発信者情報の開示請求権の要件を一部整理したものであって新たに請求
権を創設したものではないから本件投稿やログイン後に改正された法を適用す
るのが相当であると判断したものである。そして、A,B,Cら関係者ら相互
の人権の均衡に配慮し、Cの通信記録で特定でき、かつ、時間的に本件投稿に
もっとも近いログイン1件についてAの請求を認めた。
4 コメント
裁判所は発信者情報の開示を複数の人権の調整ととらえた。新たな請求権
の創設というようなドラマチックな改正ではないから改正後の法を適用するの
が相当という判断も面白い。