【刑事事件:裁判所が被害者の検察官調書を採用した事件】

令和6(あ)1161  窃盗、強盗致傷被告事件
令和7年7月7日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  仙台高等裁判所

1 ポイントは何か?


検察官が被害者から聞き取り作成した調書の取扱い(刑事訴訟法321条1項
2号前段による採用)。

2 何があったか?


検察官が強盗致傷事件の被害者の調書(A調書)を作成したが、公判当時、被
害者本人が裁判所に出廷して供述することはできなくなっていた。
その場合、裁判所は、刑事訴訟法321条1項2号前段によれば、法廷で、証
拠として採用することができることになる。

3 裁判所は何を認めたか?


第1審の地方裁判所は、A調書を採用し、被告人を有罪とした。
被告人が控訴した。
第2審の高等裁判所は、A調書の採用は違法として、被告人に控訴理由ありと
認めて、地方裁判所の判決を破棄し、被告人の刑を軽くした。しかし、その判
断中で、被害者本人が裁判所に出廷して供述することはできなくなっていたこ
とも認めた。
被告人は、さらに軽い刑を求めて、上告した。
最高裁判所は、被告人の上告を棄却したので、第2審の高等裁判所の判決の内
容で確定した。しかし、最高裁判所の決定の判断中で、第1審の地方裁判所が
A調書を採用したことを適法とし、第2審の高等裁判所の判断には「同法
397条1 項、379条の解釈適用を誤った違法がある。」とした。

4 コメント


条文は、忘れてしまうので、いつも確認することが必要だ。
(刑事訴訟法の条文)
第321条 被告人以外の者が作成した供述書又はその者の供述を録取した書
面で供述者の署名若しくは押印のあるものは、次に掲げる場合に限り、これを
証拠とすることができる。
一 裁判官の面前(映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しなが
ら通話をすることができる方法による場合を含む。次号において同じ。)にお
ける供述を録取した書面については、その供述者が死亡、精神若しくは身体の
故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供
述することができないとき、又は供述者が公判準備若しくは公判期日において
前の供述と異なつた供述をしたとき。
二 検察官の面前における供述を録取した書面については、その供述者が死亡
、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しく
は公判期日において供述することができないとき、又は公判準備若しくは公判
期日において前の供述と相反するか若しくは実質的に異なつた供述をしたとき
。ただし、公判準備又は公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特
別の情況の存するときに限る。(以下省略)
第397条 第377条乃至第382条及び第383条に規定する事由がある
ときは、判決で原判決を破棄しなければならない。
第379条 前二条の場合を除いて、訴訟手続に法令の違反があつてその違反
が判決に影響を及ぼすことが明らかであることを理由として控訴の申立をした
場合には、控訴趣意書に、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現
われている事実であつて明らかに判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるこ
とを信ずるに足りるものを援用しなければならない。

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