【離婚:夫婦双方からの裁判離婚で、離婚原因、親権者の指定、養育料、慰謝料を争った事件】

離婚等請求本訴、同反訴事件

大津家裁令和元年11月15日判決

大阪高裁令和2年9月3日判決

最高裁第二小法廷令和4年1月28日判決

(判例タイムズ1498号39頁)

1 ポイントは何か?

  • 離婚協議、離婚調停、離婚裁判、参与員
  • 離婚原因、離婚、離婚届
  • 親権者の指定、監護費用(養育費)、面会交流
  • 財産分与、年金分割
  • 離婚慰謝料

2 何があったか?

X(夫、結婚当時30歳)とY(妻、同23歳)が平成16年に結婚した。

夫婦間に、長女A及び長男Bが生まれた。

Xは、平成29年に、A及びBを連れて、Xと別居した。

夫婦間で協議離婚が整わない場合は、離婚訴訟を提起する前に、家裁に離婚調停を申し立てなければならないから(調停前置主義、家事事件手続法257条)、XとYも、離婚調停を経ていると考えられる。しかし、調停は不成立となり、Xから、家裁に離婚等請求事件を提起した。そして、Yが、離婚等請求反訴事件を提起した。

双方とも、離婚の附帯処分として、A及びBの親権者の指定・養育費の申立をし、慰謝料の支払を求めた。

3 裁判所は、何を認めたか?

家裁の離婚訴訟では、裁判官は、参与員の意見も聞いて判決した(人事訴訟法9条)。

同判決は、①XとYの離婚を認め、②Yを、A及びBの親権者に指定し、③XからYに支払うべき養育費を、A及びBがそれぞれ20歳に達する月まで1人につき1か月4万2000円とし、④慰謝料は、XからYに100万円、YからXに200万円とし、いずれも遅延損害金は、改正民法施行(令和2年4月1日)前の法定利率である年5分とした。

遅延損害金の起算日は、判決確定の日の翌日である。

地裁が、④で、X及びYの双方に、慰謝料を認めたのは、婚姻の継続を認めがたい事由について、双方のそれぞれに責任があると判断したからである。

これに対し、Yが控訴し、③の養育費の額を、1人1か月9万円に増額変更し、④のXからYに支払うべき慰謝料の額を150万円に増額変更するよう、また、YからXに200万円支払うべきとした慰謝料は取消し、Xの慰謝料請求は棄却するよう求めた。また、⑤高裁での追加的附帯処分として、年金分割について請求すべき按分割合を0.5と定めるよう求めた。

高裁では、③の養育費の額を1人につき1か月8万円に増額変更した。④のXからYに支払うべき慰謝料の額を120万円に増額変更し、また、YからXに200万円支払うべきとした慰謝料は取消し、Xの慰謝料請求は棄却した。⑤財産分与の年金分割についての請求すべき按分割合を0.5に定めた。

高裁が、③で、XのYに対する慰謝料200万円を取消し、Xの請求を棄却した理由は、婚姻を継続しがたい事由の責任は双方にあるが、その主たる原因は、Yの言動にあると認定したからである。

また、Xが、Yに対して、別途、不当利得返還請求訴訟を提起中であることも考慮され、XのYに対する慰謝料請求は、本来、同訴訟で解決すべき問題であるとした。

そこで、今度は、Xが上告した。そして③の養育料の額、④のXからYに支払うべき慰謝料の額の120万円のうち20万円の部分、YからXに対する慰謝料の棄却、⑤の年金分割の按分割合等を不服として、変更を求めた。

最高裁は、④のXからYに支払うべき慰謝料の額を120万円のうち100万円をこえる20万円の部分の遅延損害金の年5%を年3%に変更し、他の不服申立すべて却下ないし棄却した。

最高裁が、慰謝料の20万円の部分の遅延損害金の年5%を年3%に変更した理由は、離婚慰謝料は婚姻破綻の原因となった言動による個別の慰謝料分も含み、その発生時期は、一体として、離婚が確定したときであり、XとYの離婚は、民法の法定利率が5%から3%に改正された改正民法の施行(令和2年4月1日)後に、裁判が確定することになるので、遅延損害金の利率は3%であるという。

4 コメント

平成29年の別居から令和4年の判決まで約5年。当事者にとっては、大変な事件だったと思います。子供らにとっても、生きた心地がしなかったことでしょう。吉本隆明が、鋭い感性で、夫婦のいさかいは、子供らの最大の危機ということを書いていました。

夫婦は、仲良く、協力することが一番です。家庭の平和こそが、社会の平和の基盤です。夫婦のいさかいの火種は、いくらでもあります。みんな、何とかして乗り越えています。

しかし、どうしても、離婚せざるを得ないことになった場合は、子供らの福祉と成長を、第1に考えなければなりません。

離婚慰謝料については、本件の大津家裁のように、XとYのそれぞれの損害について、双方の過失割合を検討して、それぞれの損害額を決めるという方法も、決して間違ったやりかたではなかったと思います。その方が、子供らが成人してから、親同士の離婚を振り返ったとき、どちらがどれだけ悪かったのかということが、数字でわかります。

もちろん、高裁の、婚姻を継続しがたい事由について主たる原因のある当事者のみに損害賠償責任を認め、慰謝料を払わせるのが普通の方法かと思います。

離婚慰謝料は、婚姻を継続しがたい事由となった婚姻中の暴力暴言などによる個別の慰謝料も一体として含み、離婚判決が確定したときに遅滞に陥るとは言っても、婚姻中の言動について、離婚ではなく、個別のDVとして、相手に損害賠償を請求することもできます。すぐに離婚を解消するよりも、その方が、夫婦関係の円満解決のために良い場合もあろうかと思います。

最高裁が、XのYに対する慰謝料120万円のうちの20万円の減額は行わず、その部分についてのみ遅延損害金を年5%から年3%に改めたのは、たまたま、民法改正の時期に重なったので、珍しいやり方だったかなと思います。

残りの100万円については年5%のままなので、落ち着きが悪い。最高裁の職権で、120万円全部の遅延損害金を5%から3%に訂正することを求める上告の趣旨の変更を促し、120万円全体について、年3%に改めることもできたのではないかと思いますが。

  

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