1 ポイントは何か?
本件は、内縁解消後の争いである。内縁の当事者の一方Dが他方Aに対して旅館業に必要な土地の所有権を取得させる諾約を履行不能にしたうえで、AからDへの贈与金をAからBに譲渡し、BからAに請求し、Bの勝訴判決が確定したことに対して、内縁解消ではDの代理人であったF弁護士がAの代理人としてBに対し、Dに対する諾約債務の履行不能の損害賠償請求権を自動債権として、BがDから譲渡を受けた贈与金請求権を受働債権として相殺の意思表示をし、請求異議訴訟を提起し、勝訴した事件である。
2 何があったか?
① AとDは内縁関係にあった。
② AとDは、昭和30年8月頃、DがEからAの旅館経営上必要な土地114坪(本件土地)の無償譲渡を受けてAに所有権を移転することを約諾した。
③ AとDは、DがF弁護士に依頼して申し立てた調停で、同年12月28日に内縁を解消した。
④ 内縁解消契約の調停条項で、AはDに対し100万円を贈与すること、及び、DはAに対し本件土地の所有権移転の約諾を速やかに履行することを確約した。
⑤ Aは、Cに内金50万円を即日支払ったが、残金50万円の支払い期限は昭和31年1月末日としていたところ遅滞した。
⑥ Dは、本件土地についての約諾を履行不能にした(Dが第三者に本件土地を二重譲渡し、所有権移転登記手続もしたなどが考えられる。)。これにより、AはDに対し、損害賠償請求権を取得し、これを自働債権とし、DのAに対する残金50万円の請求権を受動債権とする相殺適状にあった。
⑦ DはCに昭和33年3月14日、Aに対する残金50万円の請求権を譲渡した。
⑧ CはAに対して金50万円の請求訴訟を提起し、Cの勝訴判決が確定した。
⑨ Aは、F弁護士を代理人として、本件土地の所有権移転の履行不能に基づく損害賠償請求権を自働債権とし、Cの確定勝訴判決に基づく債権を受動債権として総裁の意思表示をし、DからCに対し、請求異議訴訟を提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
A勝訴。
債権譲渡前に相殺適状にあれば、相殺の意思表示はその後でも有効である(大審院民事連合部明治43年11月26日判決、民録16輯764頁を引用する。)。
弁護士FがDの代理人としてAに離婚調停を申立て、Aの代理人としてDに対し請求異議訴訟を申し立てたことには双方代理の問題はない。
不動産の贈与は所有権移転登記前であっても、引渡しにより民法550条の履行があったと言える(最高裁判所昭和27年(オ)第470号29年(オ)第195号を引用する。)。
4 コメント
F弁護士の相殺の意思表示と請求異議訴訟の発想は素晴らしい。Dが本件土地を別の第三者Cに移転していたとしたら、F弁護士ならば、別途、これを仮差押し、Cに対しAへの所有権移転登記を求める訴訟が提起されているかも。
判例
昭和38(オ)1066 請求異議
昭和40年4月2日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 福岡高等裁判所
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