【契約:結婚式運営会社に新型コロナウイルスのまん延を理由として解約し、婚礼費用前受金の返還を求めた事例】

前受金返還請求事件

東京地方裁判所令和3年9月27日判決

(判例時報2534号70頁)

1 ポイントは何か?

 ⑴ 挙式契約の通常の解約に基づく一部返金条項と、不可抗力に基づく全部返金条項

⑵ 安全配慮義務違反

⑶ 事情変更の原則

2 何があったか?

 ⑴ 挙式契約の締結

   Xは、結婚式運営会社Yとの間で、A会場で、令和2年3月28日に招待客102名とする挙式及び披露宴を行うとの挙式契約を締結した。

   Xは、Yに対し、令和2年3月12日までに、前受金615万3289円を支払った。

 ⑵ 令和元年の年末頃、中国武漢で原因不明のウイルス性肺炎の症例が発見され、令和2年1月7日、原因ウイルスが新型コロナウイルスであることが判明したが、前記式予定日段階では、まだ治療法が発見されていなかった。

 ⑶ Xは、Yに対し、令和2年3月25日、挙式契約の解約を申し入れる旨の意思表示をした。

 ⑷ Yは、Xに対し、通常の解約として前受金の一部129万8769円を返還した。

 ⑤ Xは、Yに対し、不可抗力による解約として残金485万4520円の返還を求めた。

3 裁判所は何を認めたか?

  X敗訴。

  Xは、⑴契約の不可抗力に基づく全額返金条項の適用、⑵安全配慮義務の債務不履行に基づく契約解除、⑶事情変更の原則による契約解除等主張したが、裁判所は、いずれも認めなかった。

理由は、⑴不可抗力の主張については、➀政府の緊急事態宣言はまだ出されていなかったこと、➁東京都の自粛要請の対象に結婚式場は含まれていなかったこと、③Xの挙式予定日に、Yの会場では別の組の挙式等が行われたこと、③Yの会場の高い天井や中央に階段がある構造などから三密の条件が重なる場とは認められないこと、⑵安全配慮義務違反については、Yは通常要求される程度の対策を講じていたこと、⑶事情変更の原則については、信義則上著しく不当であるとは言えないことなどである。

4 コメント

  せっかくの結婚式だったのに、残念なことでした。

  

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