1 ポイントは何か?
人身傷害保険のある普通保険約款
人傷一括合意
2 何があったか?
AがY1及びY2の両運転車両に順次轢過され死亡した。Aと人身傷害保険付き自動車保険契約を締結していた保険会社BはAの妻X1及び子らX2~4に人身傷害保険金合計3000万円を支払い、Y1、Y2とそれぞれ自賠責保険を締結していた保険会社C、Ⅾから自賠責保険金各3000万円、合計6000万円を受領し、X1及び子らX2~4に人身傷害保険金追加金合計3000万円を支払った。X1及び子らX2~4は、Aの損害金合計金(弁護士費用等除く実被害金)を8285万2812円、XIの固有の損害金を350万円、X1~4の固有の損害金を各100万円としてこれに弁護士費用、遅延損害金を付加してY1及びY2に対し請求した。BはX1らに補助参加した。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審 東京高等裁判所
Aの過失割合3割を減額し、Bが支払った人身傷害保険金6000万円は自賠責保険金の立替払いであると認定してBに移転した損害賠償金額を差し引いた結果た結果、X1の民法709条、719条に基づく請求を弁護士費用込み357万9854円及び遅延損害金 の連帯支払を求める限度で認容すべきものとし、上告人子らの上記各条に基づく各請求をそれぞれ105万0761円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容した。
⑵ 最高裁判所
Aの過失割合3割を減額し、Bが支払った人身傷害保険金6000万円のうち3000万円は自賠責保険金の立替払いであると認定しBに移転した損害賠償金額を差し引いた結果た結果、た結果、X1の民法709条、719条に基づく請求を弁護士費用込み1901万0006円及び遅延損害金 の連帯支払を求める限度で認容すべきものとし、X1~4の上記各条に基づく各請求をそれぞれ613万5430円及び遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容した。
4 コメント
非常に細かい計算になりますが,チャレンジすると頭の体操になります。保険会社Bは、6000万円全額を自賠責に清算する内部処理をしたとのことで、最高裁判決はBに対して厳しい判決ということになります。そうでなければ人身傷害保険の意味がありませんね。
(計算)最高裁判所のX1の認容額
(8285万2812円÷2+350万円)×0.7=3144万8488円
3144万8488円+1500万円=4644万円8484円
8285万2812円÷2+350万円=4492万6406円
4644万円8484円-4492万6406円=152万2078円
3144万8488円-152万2078円=2992万6406円
1500万円-103万5394円-132万8206円=1263万6400円
2992万6406円-1263万6400円=1729万0006円
1729万0006円+172万円=1901万0006円
(本件最高裁判決が引用する他の最高裁判例)
人傷一括払合意をしていたというこ とだけで、上記金員に自賠責保険からの損害賠償額の支払分が含まれているとみる のは不自然、不合理であり(最高裁令和2年(受)第1198号同4年3月24日 第一小法廷判決・民集76巻3号350頁参照)
判例
令和4(受)648 損害賠償請求事件
令和5年10月16日 最高裁判所第一小法廷 判決(破棄自判) 東京高等裁判所092426_hanrei.pdf (courts.go.jp)
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