1 ポイントは何か?
土地の一部の取得で土地全部の処分禁止を求めることができるか。
2 何があったか?
実際に何があったかは、原審高等裁判所、原々審地方裁判所の決定を見なければ和赤らないが、土地の時効取得とは、たとえば境界部分の測量をしたところ、10年以上ブロック塀で囲っていた土地が隣地の一部を取り込んでいたというような場合、10年の取得時効を援用すれば、その部分の所有権が占有していた人に移転する。そして、時効取得者には元の所有者に対して土地の分筆と分筆した土地の所有権移転登記手続きを求める権利がある。
時効取得者が分筆と所有権移転登記手続請求権を保全するために元の土地所有者の土地売却を禁止する仮処分を申し立てた。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審高等裁判所
時効取得者は元の所有者に代位して分筆登記をし、所有権移転登記手続きをすればよいから保全の必要性はないとして元の所有者が売ろうとするのを禁止する保全処分を認めなかった。抗告棄却決定。
⑵ 最高裁判所
原則として高裁決定の通りであるが、時効取得者が基に所有者に代位して分筆し所有権移転登記手続をすることができないか過度に困難である特段の事情、元の所有者に過度の負担にならない事情があること、登記請求権の存在や内容によっては保全の必要性を認めることができる場合がある。よって、さらに審理を尽くさせるために、原審高裁決定を破棄し、原審に差戻しの決定をした。
4 コメント
土地の一部の所有権で全部の保全処分を行うことは必ずしも簡単ではない。
判例
令和5(許)9 仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和5年10月6日 最高裁判所第三小法廷決定(破棄差戻)
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