【税金事件:固定資産税評価基準を争った事件(大阪)】

令和5(行ヒ)142  固定資産価格審査決定取消等請求事件
令和7年2月17日  最高裁判所第二小法廷判決(破棄自判)
原審大阪高等裁判所


1 ポイントは何か?


高層建物の固定資産税評価額の定め方。


2 何があったか?


Aは、本件建物1の区分所有者であり、本件建物2の所有者である。
本件建物1は、平成13年6月30日に新築され、平成20年4月22日に
一部増築された25階建ての非木造家屋である。
本件建物2は、平成8年3月28日に新築された地下1階付き9階建ての非木
造家屋である。
大阪市長は、平成30年4月2日、本件建物1の平成30年度の価格を101
億5367万2000円と、本件建物2の同年度の価格を24億0083万
2000円とそれぞれ決定し、これらを家屋課税台帳に登録した。
Aは、本件建物1の増築前既存部分については、S造(骨格材の肉厚が4㎜を
超えるもの)が床面積の少なくとも58パーセントを占めており、本件建物2
についてはそれが約80パーセントを占めており、それに応じた経年減点補正
率を適用すべきであり、SRC造等経年減点補正率を適用してされた本件登録
価格の決定は違法であると主張した。
大阪市固定資産評価審査委員会は、平成31年3月20日、本件建物1につき
審査の申出を棄却する決定をし、本件建物2の価格を22億8059万
2000円に変更する決定をしたが、これは再建築費評点数の変更によるもの
であり、経年減点補正率の変更によるものではない。


3 裁判所は何を認めたか?


大阪高等裁判所は、Aの主張を認め、S造に基づく経年減点補正率を適用た本
件各登録価格は、評価基準によって決定される価格であるといえる床面積方式
に従って求めた経年減点補正率を適用して算定された価格(本件建物1につき
90億0767万8000円、本件建 物2につき18億6185万3000
円)を上回っているから、本件各審査決定はいずれも違法であるとした。
最高裁判所二小は、これを覆し、SRC造の部分は建物全体を支える基底部分
であるから、その補正率を用いたことは不合理・不平等であるとは言えないと
した。
草野耕一裁判官の広島高裁の判断を支持する少数意見があり、補正率が最も厳
しい低階層補正率を基準とすることは納税者に対してドラコニアンであるとい
う。


4 コメント


私は、地方自治の本旨から考えて、敢えて大阪市長の決定した固定資産税評価
額を違法としない最高裁二小の判決を支持する。そして大阪市長と議会の間で
の政治的解決においては、大阪高裁の判決と草野判事の少数意見(ドラコニア
ンとは面白い。)を十分に考慮すべきであると思う。このような政策変更の回
り道は時間がかかるが、それが民主主義であると思う。