1 ポイントは何か?
損害賠償請求は事故と相当因果関係のある損害に限られるが、本件は交通事故と被害者の自殺に相当因果関係があることを認めたうえで相応の減額をして遺族らによる損害賠償請求を認容した事例である。
2 何があったか?
昭和59年7月28日に交通事故にあった被害者が頭部打撲、右額部両膝部打撲 擦過傷、左膝蓋骨骨折、右肩右眼囲打撲皮下出血、腹部打撲、右上膊部打撲、頸部 捻挫の傷害を受け、同61年10月8日に 症状固定の診断がされ、頭痛、頭重、項部痛、めまい、眼精疲労などの後遺症は、 自動車損害賠償保障法施行令2条別表等級第14級10号と認定された。
被害者は同63年2月10日に自殺した。
被害者の遺族らが、加害者に対する損害賠償請求を申し立てた。
3 裁判所は何を認めたか?
被害者が一部勝訴。
「本件事故によりDが被った傷害は、身体に重大な器質的障害を伴う後遺症を 残すようなものでなかったとはいうものの、本件事故の態様がDに大きな精神的衝撃を与え、しかもその衝撃が長い年月にわたって残るようなものであったこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかったことなどが原因となって、Dが災害神経症状態に陥り、更にその状態から抜け出せないままうつ病になり、その改善をみないまま自殺に至ったこと、自らに責任のない事故で傷害を受けた場合には災害神経症状態を経てうつ病に発展しやすく、うつ病にり患した者の自殺率は全人口の自殺率と比較してはるかに高いなど原審の適法に確定した事実関係を総合すると、本件事故とDの自殺との間に相当因果関係があるとした上、自殺には同人の心因的要因も寄与しているとして相応の減額をして死亡による損害額を定めた原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。」
4 コメント
損害賠償制度の目的は、当事者双方の利害の調整にある。自殺の原因は何かを追及すると様々なことが考えられ、本件がその参考となる。
判例
平成5(オ)561 損害賠償反訴、同附帯
平成5年9月9日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却
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