1 ポイントは何か?
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(平成25年法律第86号)は、飲酒運転による事故のうち、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ人を死傷させた場合(2条1号)、及び、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、その結果正常な運転が困難な状態に陥り人を死傷させた場合(3条1項)の2種類を危険運転致死傷罪とし、過失運転致死傷罪(5条)と区別している。飲酒運転であっても、アルコールの影響によらない事故の場合には刑が軽い5条で処罰されることもありうる。本件は、被告人が飲酒運転により4人を死傷させた事故であり、弁護人は5条の適用を主張したが、3条1項の危険運転致死傷罪で処罰された事件である。
2 何があったか?
被告人は、深夜に飲酒後自動車の運転を開始し、2分後に直進道路上で、夜警の隊列を組んで歩行していた8人の内4人をはねて走り去った。内2人を死亡させた。
飲酒量は、大阪府警が用いるウィドマーク計算式で呼気1リットル当たり0.363ミリグラムから0.994ミリグラムと算出された。
防犯カメラで、自動車に乗る前の被告人の歩行はふらついていた。弁護人は、ふらついていないものもあったと主張した。
検証の結果、被告人は、被害者らの約70メートル後方から被害者らを視認することができた。弁護人は、検証の方法が被告人を衝突地点から視認可能地点まで歩かせる方法であり、不合理であると主張した。
被告人は、制限時速を20キロメートル以上超える時速64キロメートルで走行し、衝突時ブレーキもかけていない。
被告人車は、上記衝突の衝撃によりフロントバンパー左側、左ヘッドライト、ボンネットパネル左側、左フロントフェンダーパネル、左フロントピラーが破損し、フロントガラス左下部が蜘蛛の巣状に割れ、左フロントドアミラーのカバーが外れたが、そのまま現場を走り去った。
弁護人は、本件事故は前方不注視、一瞬の居眠りなどを原因とした通常の過失運転の可能性があり、本件事故後、被告人が停車しなかったことについても、被告人が電柱に衝突したと思い込んだためであるから、危険運転を裏付ける事情ではない旨を主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
懲役10年(求刑懲役12年)
4 コメント
飲酒運転による死亡事故が多発したために「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(平成25年法律第86号)が制定されました。薬物接種の場合にも適用されます。飲酒運転をしてアルコールの影響によらず過失による事故を起こして人を死傷させた者が、アルコールの影響の発覚を免脱する行為をした場合は刑の加重がある(4条)。また、無免許運転で事故を起こした場合の刑の加重がある(6条)。
判例
令和5(わ)10 危険運転致死傷
令和5年9月29日 大阪地方裁判所
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