【刑事事件:スーパーマーケットで食料品を合計93点、3万6135円分万引きした事件】

1 ポイントは何か?


  被告人は、クレプトマニア(窃盗症)である。万引で2回目までの起訴では、いずれも執行猶予付きの判決を受けたが、3回目は実刑判決となった。弁護人は、量刑が重すぎると主張したが、裁判所は、犯行は大胆であり、常習性も顕著であるとして、弁護人の主張を認めなかった。


2 何があったか?


  被告人は、万引き事件で、過去に2回の執行猶予つき判決を受けていた。2回目は保護観察もついていた。しかし、前回の執行猶予期間経過後、またスーパーマーケットで食料品を合計93点、3万6135円分万引きし、3回目の起訴をされた。
弁護人は、被告人がクレプトマニア(窃盗症)にり患しており、治療中であることを情状として考慮して3回目も執行猶予を付すべきであると主張した。医師も、刑罰よりも治療が大切であると証言している。


3 裁判所は何を認めたか?


  裁判所は、あまりにも大胆な犯行であり、常習性も顕著であるから、被告人がクレプトマニアであり治療中であることを考慮しても懲役10月の実刑判決はやむを得ないとした。


4 コメント


  クレプトマニアは、違法とわかっていても自ら制止することができないので、常習的に万引きをするのであるから、これは、心神喪失として無罪(刑法39条1項)あるいは心神耗弱として必要的減軽(同条2項)をすべきではないか。あまりにも大胆な犯行であり、犯行を隠そうとすらしていないこと、常習として犯行を犯すことは、むしろ、犯行を制止できない様子の表れではないか。しかし、このように認める裁判例は裁判所ホームページでは見当たらない。
  構成要件的故意と、責任要件としての故意を明確に分けるべきである。構成要件的故意は明らかに存在しても、違法行為を自ら制止できないということは、違法の意識がないことと同じであり、責任要件としての故意がないということにほかならないのではないか。

判例

大阪高等裁判所第3刑事部平成26年(う)第469号窃盗被告事件、平成26年7月8日判決、原審神戸地方裁判所伊丹支部