1 ポイントは何か?
自賠責保険と労災保険の調整
2 何があったか?
国Cは、交通事故の被害者Bに労災保険給付として療養補償給付及び休業補償給付を行った。これらの価額の合計は864万2146円であり、上記の労災保険給付を受けてもなお塡補されないBの本件傷害による損害の額は、440万1977円である。
加害者Dが自賠責保険契約をした保険会社Aは、自賠責保険金としてBに160,788 円、労災保険給付金支払いによりBに代位したCに1,039,212円を支払った(合計120万円は自賠責保険の支払限度額)。
Bは、Aに対し、Bの請求はCの請求に優先するとして自賠責の支払限度額の残金1,039,212円を請求した。
3 裁判所は何を認めたか?
- 大阪高等裁判所
Bが勝訴。交通事故の被害者は、国から労災保険給付等を受けてもなお塡補されない損害について自賠責保険の保険会社に直接請求権を行使する場合は、国に優先して自賠責保険金額の限度まで損害賠償額の支払を受けることができる(最高裁平成29年(受)第659号、第660号同30年9月27日第一小法廷判決・民集72巻4号432頁参照)から、AのCに対する支払いは無効であるとした。
- 最高裁判所ではAが勝訴。
原判決破棄、原々判決取消し、Bの請求を棄却。総費用B負担。
前掲平成30年最高裁判決は、被害者と国との間に相対的な優先劣後関係があることを意味するだけで、国への弁済の効力を否定する根拠にはならないからAのCに対する支払いは有効であるとする。なお、Cが、Bに対し、不当利得返還義務を負うことは別論とする。
4 コメント
Bは未填補損害について、最高裁判所は、自賠責保険に対する直接請求について、被害者最優先の考え方をとらなかった。自賠責保険の国に対する支払いは有効としたうえで、被害者は国に対して不当利得返還請求をすればよいという。
(参考)
自動車損害賠償保障法16条1項(被害者の直接請求権)
自動車損害賠償保障法 | e-Gov法令検索
労災保険法12条の4第1項(政府の直接請求権)
労働者災害補償保険法 | e-Gov法令検索
令和3(受)1473 保険金請求事件
令和4年7月14日最高裁判所第一小法廷判決(破棄自判)
原審 大阪高等裁判所
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