名古屋高等裁判所令和2年1月16日判決、判例時報2520号21頁
1 ポイントは?
- 賃貸借と使用貸借の違い(使用貸借:動産、不動産を無償で貸し付ける)
- 使用貸借契約では、借主に信頼関係破壊があった場合、帰責事由がなくても解約でき
るか。 - 使用貸借契約が終了する場合。
2 何があったか?
親族XB間で土地の使用貸借契約を締結し、借主Bが建物を建てて子供Yと住んでい
た。Bはその後死亡した。Yは同建物を相続したが、同建物から転居した。
貸主XとYの関係が悪化し、XがYに対して、建物収去土地明渡を求める裁判を提起し
た。
Yは、建物所有目的の土地の使用貸借契約は借主が死亡しても、建物がある以上、土
地の使用収益が終わっていないので解除できない、信頼関係は破壊されていないなど
と争った。
3 裁判所は何を認めたか?
1審、名古屋地方裁判所では、Y勝訴、X敗訴。
理由は、建物が残っており、信頼関係破壊の事実はないというもの。
2審、名古屋高等裁判所では、Xが逆転勝訴。Y敗訴。
理由は、XY間に信頼関係破壊があり、貸主は解約できるというもの。
4 コメント
貸主Bの死亡は、通常、使用貸借契約の終了事由である。
だが、地上建物が残っている場合は、土地の使用貸借契約が終了しない場合もある。
しかし、使用貸借では、借主の信頼関係破壊があれば、帰責事由がなくても、解約の
根拠となる。この点、学説には、信頼関係破壊の根拠は債務不履行によるべきで、帰
責事由を必要とするなどの反対論もある。
契約論の不思議な面白さというのはこんなところにもある。
私は、帰責事由はやはり必要ではないかと思う。そうでなければ、権利濫用での借主
救済くらいか。
参考「使用貸借の法律と実務」埼玉弁護士会=編、令和3年9月25日第1刷。
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