【交通事故:普通乗用自動車が歩行者に接触して死亡させた事例】

損害賠償請求事件

高松地裁平成29年7月18日判決

高松高裁平成30年1月25日判決

(判例時報2520号30頁)

1 ポイントは何か?

⑴ 事故態様、注意義務

⑵ 相続人

⑶ 公務員の死亡退職手当

⑷ 自賠責保険既払金

⑸ 損害賠償請求・判決の内訳

ア 葬儀関連費用

イ 逸失利益

① 給与の逸失利益

② 定年退職手当の逸失利益

  ウ 慰謝料

① 死亡慰謝料

② 傷害慰謝料

③ 遺族の固有の慰謝料

⑹ 弁護士費用

⑺ 遅延損害金

2 何があったか?

⑴ Yが、平成27年9月6日午後9時ころ、普通乗用自動車を運転中に、対向車に気をとられて、左路側帯付近を歩行中のAに気づかず、接触し、びまん性脳損傷の障害を負わせ、Aは、緊急搬送されたが、翌日午前1時ころ死亡した。

  夜間・降雨中で、Yは、かかる状況を踏まえて、適宜速度を調整し、前方左右を注視して進行する義務があるのに、怠った。

⑵ Aには妻X1、両親X2およびX3がいた。

⑶ AはB市の公務員であり、X1は、B市から香川県総合事務組合退職手当条例に基づいて、死亡退職手当700万9189の支払を受けた。

⑷ X1は、平成28年1月22日、自賠責保険金として1934万1181円の支払いを受けた。X2およびX3は、同年6月9日、自賠責保険金として各自533万3899円の支払いを受けた。

3 裁判所は何を認めたか?

⑴ X1と、X2およびX3は、別々に高松地裁に訴訟を提起したが、同地裁では併合して審理された。

  X1は、6278万5708万5197円+遅延損害金を請求し(甲事件)、X2およびX3は、各々に対し1698万6982円+遅延損害金を請求した(乙事件)。

X1ないしX3の請求の特徴をまとめると、次の通りである。

葬儀関連費用については、かかった費用すべてを請求した。

Aの逸失利益中、Aの給与の逸失利益については、基礎収入は、本件事故の前年の賃金センサスの男性・大学大学院卒・全年齢平均によるべきことと、就労可能年数は67歳まで、生活費控除率は30%と主張した。これを相続分で分ける。

Aの定年退職手当の逸失利益については、Aが60歳定年まで勤務した場合の定年退職手当に、Aの死亡時から定年までのライプニッツ係数を乗じた原価(1円未満切り捨て)によるべきことを主張した。これを相続分で分ける。

X1については、相続分から死亡退職手当を控除する。

X2およびX3は、死亡退縮手当も、相続分により分けられ、受け取れると考えたようであり、右原価から死亡退職手当の差額の相続分を請求している。その結果、本来請求できる金額よりも少ない請求になっている。

  慰謝料について、Aの死亡慰謝料、Aの傷害慰謝料(本件事故から死亡までの4時間分)、および、X1ないしX3の固有の慰謝料を請求し、Yが謝罪しない等の不誠実な態度を慰謝料増額事由として主張した。

  これらから既払金を控除し(既払金支払いまでの遅延損害金の発生など、細かな計算がある。)、弁護士費用および遅延損害金を付加した。

⑵ 地裁判決は、Yに対し、X1に3564万7628円+遅延損害金を、X2およびX3の各々対し、1698万6982円+遅延損害金を支払うよう命じた。

地裁判決の特徴をまとめると、次の通りである。

葬儀関連費用については、X1ないしX3の全部で150万円の限度で認めた。

Aの逸失利益中、Aの給与の逸失利益については、基礎収入は、本件事故の前年のAの年収と60歳時の推定年収の中間値によるべきことと、生活費控除率は30%とすべきとした。これをX1ないしX3が相続分で分ける。

定年退職手当の逸失利益の計算方法については、X1ないしX3の主張を認め、これを相続分で分ける。X2およびX3については、この方法では、この費目だけについていうと請求額を越えて認定することになるが、請求認容額全体としては費目の流用により、請求の範囲内に止まるから、処分権主義に反しないとする。処分権主義とは、裁判所が、当事者の請求の範囲を越えて支払いを命じることはないということである。

X1については、相続分から死亡退職手当を控除する。

  慰謝料について、死亡慰謝料、および、遺族の固有の慰謝料を認めた。

  障害慰謝料は、本件では、死亡慰謝料に含まれるとした。

  これから自賠責の既払金を控除し、弁護士費用および遅延損害金を付加した。

自賠責の支払までに遅延損害金が発生している場合は、それを既払金から差引いて弁護士費用以外の損害額から控除し、遅延損害金の開始時期は自賠責支払日の翌日からとする。

弁護士費用の遅延損害金は、事故日からとする。

(3) 地裁の判決に対し、X1のみ控訴し、X2およびX2は控訴せず、確定した。

 高裁は、Yに対し、X1に、3815万5094円+遅延損害金を支払うよう命じた。

高裁判決が地裁判決と異なる点は、X1が、B市公務員として支払いを受けた死亡退職手当を、X1が相続人としてYに請求する、Aが本件交通事故から受けた損害からどのように控除するかという方法についてであり、Aの退職手当逸失利益からのみ控除することができるとした。

  その理由は、死亡退職手当は、本件事故による損害の填補を目的としたものではなく、本来的に損害額から控除されるべき給付ではなく、あくまでも、将来の退職手当相当額を損害として請求された場合にのみ現実の給付との二重利得を避ける観点から考慮すべきものである。退職手当の逸失利益は、給与の逸失利益など、他の損害費目と等質性を有するものとは言えないから、費目を越えて損益相殺すべき合理性を有するとはいえない。退職手当逸失利益を請求した者が、請求しなかった者より不利益を被ることは不合理である等。

4 コメント

公務員の死亡損害についての考え方が、広く適用されてもよいですね

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