不法行為による損害賠償請求事件
横浜地裁令和2年2月18日判決
(判例時報2518号78頁)
1 ポイントは何か?
女学生の人権、男性教授の地位。
2 何があったか?
大学Aの男性教授Xは、ゼミの女学生Yから、パワハラ、アカハラ(大学におけるこれらの問題をまとめてキャンパス・ハラスメントという。)で、Aのハラスメント防止対策委員会に申立てをされた。同委員会は調査委員会を立ち上げ、その調査報告書に基づきハラスメントの事実を認定し、Aに報告し、Aは教授会の意見を聴いて、Xに対する懲戒処分として、教授から准教授への降格、1級から2級への降級を決定した。
Xは、Yを被告として、Yには故意または過失による虚偽ないし誇張の申立があり、Xは、給与、賞与、退職金等の差額に相当する損害を被り、Yの故意または過失とこれらの損害との間には相当因果関係があると主張して不法行為による損害賠償請求の訴えを提起した。
AがYに当事者参加して、Aも、Yとともに、Xの主張を争った。
3 裁判所は何を認めたか?
地裁は、Yのハラスメント対策委員会への申立は虚偽や誇張ではないとして、Xの請求を棄却した。
Xは控訴したが、棄却された。
4 コメント
例えば東京大学では、東京大学ハラスメント防止委員会規則により学内での調停なども行っている。
https://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/reiki_int/reiki_honbun/au07400281.html
神奈川県では、各企業のハラスメント防止対策マニュアルを公開している。
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/4143/pawaharamanyuaru2020.pdf
キャンパス・ハラスメントは、女子学生の人格権の侵害、男性教授の労働者としての地位、教育者としての適格性、教育や研究の本質、そして、大学の自治等も関連する複雑な問題であるようだ。
Yがこのような被害を、大学のハラスメント防止対策委員会に申立てるのは、相当、切羽詰まったばあいであろう。これに対し、Ⅹは、熱心な教育、研究者のようであり、Yの申立には納得できなかったのであろう。しかし、その考え方には甘い面もある。たとえば、お笑い芸人の真似ごとは、世間一般の常識の範囲内であるかのような表現があったが、第三者を傷つけることは許されない。