【損害賠償事件:ばん馬が手術後、呼吸困難が改善せず安楽死させた事件】

札幌高等裁判所 平成18(ネ)194 損害賠償請求控訴,附帯控訴事件 平成19
年3月9日判決(原審、釧路地方裁判所北見支部)

1 ポイントは何か?


 馬の喘鳴症の医療過誤。

2 何があったか?


 ⑴ 北海道市営競馬組合が行うばんえい競馬のばん馬キタミハクリキ号(馬)
が、平成11年6月16日、畜大病院において,喘鳴症(喉頭片麻痺)と診断
され、同日手術を受け、その後、14回のレースに5回優勝した。


⑵ 平成13年4月ころ,馬の喘鳴症が再発し、同月12日、静内診療所エク
ワインメディカルセンター(静内診療所)で、A獣医師による全身麻酔による喉
頭形成術を受けた(A手術)。


⑶ 本件手術後、岩見沢競馬場の「ばんえい競馬馬主協会診療所」(ばんえ
い診療所)において翌13日以降、H獣医師による抗生物質投与や排膿手術を
行った。


⑷ 9月4日,畜大病院において,F獣医師の診察を受け、喉頭部の内視鏡検
査を行った結果、喉頭片麻痺の症状は最重度(グレード4)であり、披裂軟骨
の変形,喉頭部の腫脹が認められた。F獣医師は、馬の喉の部分に形成された
当該排膿部に続く瘻管(組織内に形成される管状の膿の排出路で、A手術部位
付近に形成された。)内に約20㎝の非吸収性の縫合糸があり、これを鉗子で
引っ張ってはさみで切断し摘出した。


⑸ 馬は,呼吸困難症状が著しいため,10月23日、安楽死の処置がされた
(死亡時4歳)。


⑹ 馬の所有者Bが、静内診療所を運営するCに対し、A獣医師が馬の手術の際
に縫合針や糸を馬の体内に残したことが馬の呼吸困難の原因であり安楽死させ
ざるを得なかったとし、医療過誤(債務不履行又は不法行為)に基づいて
、3518万0801円の損害賠償と遅延損害金の支払を求めた。

3 裁判所は何を認めたか?


地方裁判所では1164万5156円とその遅延損害金の限度でBの請求を
認めた。Cが控訴し、Bが請求を2247万5151円に減縮した上で附帯控訴
した。
高等裁判訴は、2051万3805円とその遅延損害金の限度でBの請求を
認めた。
馬は、縫合糸を残したことで感染症となり、呼吸困難により安楽死させるほ
かなかったと認定した。(縫合針を軟骨内に残したことは感染症の原因ではな
く、敗血症は認めなかった。

4 コメント


 獣医師の手術は人間の手術とほとんど変わらないものだ。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人