【建物賃貸借契約:消費者契約法に基づく適格消費者団体が、家賃保証会社に対し、消費者契約法に違反する契約条項の差止め、それらの条項が印刷された契約書ひな形の廃棄を求めた事例】

1 ポイントは何か?

家主と賃借人の間の建物賃貸借契約

家主と家賃保証会社との間の連帯保証契約

家賃保証会社と賃借人の間の家賃保証委託契約

消費者契約法

2 何があったか?

消費者契約法に基づく適格消費者団体が、家賃保証会社に対し、家賃保証契約の無催告解除条項や明け渡しみなし条項に基づく意思表示の差止め、それらの条項が印刷された契約書ひな形の廃棄を求めた。

家賃保証会社と賃借人の間の家賃保証委託契約には次のような条項が定められていた。

①無催告契約解除条項

賃借人が賃料3か月分以上遅滞したら、家賃保証貸家は無催告で建物賃貸借契約を解除することができる。

②明け渡しみなし条項

賃借人が賃料の支払を2か月以上怠り、連絡がとれず、相当期間利用していないことが明らかで、これからも利用しないと客観的に認められるときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、本件建物の明け渡しがあったものとみなす。

  消費者契約法10条は、消費者の不作為が新たな意思表示をしたものとみなされる契約条項が、信義誠実原則に反して消費者の利益を一方的に害する場合に、このような条項を無効とする規定です。

消費者契約法 | e-Gov法令検索

3 裁判所は何を認めたのか?

 最高裁判所は、家賃保証会社に対し、家賃保証会社と賃借人の間の家賃保証委託契約の①無催告契約解除条項、及び、②明け渡しみなし条項が、いずれも消費者契約法第10条に違反することを認めた。

  そして、①について、家賃保証会社に対し、これらの条項に基づく契約申込や承諾の意思表示を禁止し、この条項が記載された契約書ひな形を破棄するよう命じた。

  ②については、上告人である消費者契約法に基づく適格消費者団体が上告理由書を提出しなかったので、上告棄却となったが、上告理由書が提出されていれば、①と同じ結論となっていたであろう。

4 コメント

4月1日の新聞報道では、被上告人である家賃保証会社は、①については、信頼関係破壊条件を追加し、より厳しい条件で無催告解除ができることとし、②については契約から削除したとのことである。

  ①も②も、家賃保証会社としては、その保証責任の免除の規定にすることで足りたのではないか。

家賃保証会社ではなく、親せきの人などが連帯保証する場合には、賃借人が行方不明になると、切実な問題になりうるので、家主側とも、連帯保証契約の解除条項について、事前によく話しあってみるべきであろう。

賃借人の立場としても、不慮の事故で、家主と連絡が付かない場合に、早急に建物賃貸借契約を解除して家賃支払い義務を免れる条項を設けておくメリットがあるかもしれない。これも、家主側と事前によく話し合う必要がある。

消費者契約法12条に基づく差し止め請求事件

最高裁判所令和4年12月12日判決

裁判所HP、裁判例検索

091599_hanrei.pdf (courts.go.jp)

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