1 ポイントは何か?
男児Aが自分で負傷した可能性の有無
2 何があったか?
Dは交際相手Cの双子の男児らA及びB(当時7歳)に対する傷害等(Aに対する暴行及び傷害、Bに対する傷害)で起訴された。
Dは、Aに対する傷害の事実を否認した。
Aには急性硬膜下血腫等及び重度の認知機能障害等の後遺症を伴う脳実質損傷があり、緊急手術やその際の検査により、比較的太い架橋静脈が破断していたこと、内因性の異常により脳内出血が発生したり症状が増悪したりしたものではないことが認められた。
Aの弁護人は、Aが、本件前日にBと相撲を取った際に頭部を地面に打ち付けたことなどにより、本件当日、硬膜下血腫を生じやすい状況にあり、軽微な転倒等によって本件架橋静脈が破断した可能性がある旨主張した。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 第1審地方裁判所は、DのAに対する暴行及び傷害並びにBに対する傷害を認定し、Dを懲役3年の実刑に処した。
⑵ 東京高等裁判所は、Aが自分で負傷した可能性を否定できないとしてDのAに対する暴行及びBに対する傷害のみを認定し、第1審地方裁判所の判決を破棄してDを懲役1年6月、執行猶予4年に処し、Aに対する傷害については無罪とした。
⑶ 最高裁判所は、第1審地方裁判所の判決の認定に不合理な点はなく、A自身の行為による受傷の具体的可能性を判断する必要があるとして東京高等裁判所の判決を破棄し差し戻した。
4 コメント
このあと、どうなったか。
差戻し審の東京高等裁判所では、A自身の行為による受傷の具体的可能性は認められないとの判断に基づいて控訴棄却判決が下されたものと予想する。そして、Aが再上告しなければ、第1審地方裁判所の判決が確定する。
以上
傷害、暴行被告事件
令和4年4月21日最高裁判所第一小法廷判決(破棄差戻)
原審 東京高等裁判所
(裁判所HP裁判例検索より)
091114_hanrei.pdf (courts.go.jp)
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