1 ポイントは何か?
教育委員会の裁量権
2 何があったか?
宮城県の勤続約30年の公立学校教員Aが酒気帯び運転で物損事故を起こし逮捕された。県教育委員会BはAを懲戒免職処分及び退職金条例に基づき退職手当全不支給処分に処した。
Aは物損事故の被害弁償は完了し、刑事処分で罰金35万円を支払っている。
Aは、Bによる両処分の取り消しを求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
原審仙台高等裁判所は、懲戒免職処分を有効としたうえで、退職金には勤続報償という意味のみならず賃金の後払いないし退職後の生活保障としての性格もあるので退職手当全不支給処分は3割相当額についてBの裁量権逸脱があるとして一部を取消した。
最高裁判所はBの裁量権の機能を重視し、Bの処分が社会観念上著しく妥当を書いたとは言えないとして、原審判決を取り消し、Aの請求を棄却した。
最高裁判所裁判官宇賀克也の反対意見がある。退職金条例でも懲戒解雇以外の選択の余地もある場合は、退職金を全額不支給とすべきか否かは慎重に検討すべきとされているとして、原審の退職金不支給一部取消を支持するものである。
4 コメント
最高裁がBの裁量権を重視するのは社会秩序を維持するためであり、教員の飲酒運転を軽く考えるべきではない。しかし、Aの場合、物損事故の賠償は完了し、刑事事件で35万円の罰金を支払っている上に懲戒解雇処分を受け、かつ勤続30年の退職金の全部不支給処分が果たして社会的妥当性を欠いていないと言えるのか。似た事例として飲酒運転をした警察官が停職3か月の事例もあることを考えると、Aの処分もその程度で良かったのではないか。そのうえでA自身の判断で任意退職することもあり得た。
参考 宮城県の退職手当条例12条
職員の退職手当に関する条例 (legal-square.com)
宮城県「教職員に対する懲戒処分原案の基準」
725033.pdf (pref.miyagi.jp)
退職手当支給条例における退職手当支給制限等の処分に係る 運用方針の制定内容
unyouhousinnaiyoui.pdf (ngtsogo.jp)
懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件
最高裁判所第三小法廷令和5年6月27日判決(破棄自判)
原審 仙台高等裁判所
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