【離婚関連事件:夫が妻の不貞行為の相手方に離婚慰謝料を請求した事件】

1 ポイントは何か?

  離婚慰謝料

  不貞行為の相手方の責任

2 何があったか?

  AとBは夫婦であり、CはAの不倫相手である。AとCとの不倫関係は平成20年12月頃から平成22年5月頃までであり、Bもその頃それを知った。Aは平成26年4月頃Bと別居。Bは同年11月頃横浜家庭裁判所川崎支部に対し、Aを相手方として、夫婦関係調整の調停を申し立て、平成27年2月25日、Aとの間で離婚の調停が成立した。

その後、BがCに対し、CがBの妻であったAと不貞行為に及び、これにより離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、離婚に伴う慰謝料等の支払を求めた。

3 裁判所は何を認めたか?

 ⑴ 原審東京高等裁判所

   Bが一部勝訴

   CとAとの不貞行為によりBとAとの婚姻関係が破綻して離婚するに至ったものであるから、Cは、両者を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い、Cは、Bに対し、離婚に伴う慰謝料を請求することができる。

 ⑵ 最高裁判所

   Bが敗訴(A敗訴部分取消、Bの請求を棄却、総費用B負担)

協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても、離婚による婚姻の解消は、本来、当該夫婦の間で決められるべき事柄である。したがって、夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は、これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても、当該夫婦の他方に対し、不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして、直ちに、当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは、当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。

4 コメント

  夫婦間の離婚について第三者に対し不法行為責任を請求できる場合は皆無ではないが、特段の事情があるときに限られ、過失相殺も問題になるだろう。不貞行為を理由とする不法行為損害賠償については不貞行為を知った時から消滅時効が進行するだろう。

判例

平成29(受)1456  損害賠償請求事件
平成31年2月19日  最高裁判所第三小法廷  判決(破棄自判)

原審  東京高等裁判所

   

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