2 何があったか?
松山市が、昭和30年3月、Dから購入しその後駅前市道として整備した土地が、分筆の手違いで、登記簿上松山市への所有権移転登記手続きが行われないまま、昭和43年には隣接地との官民境界査定も行われ、昭和54年に道路台帳に掲載され、昭和58年に愛媛県の指示により道路法上の市道区域決定、供用開始決定が行われ、昭和62年には市道編成により市道の名称が変更された。
他方、Dは本件土地をEに二重譲渡し、点々譲渡されIが本件土地の所有権移転登記を得て本件土地にプレハブやバリケードを設置した。
これに対し、松山市はIに対し本訴公道確認及び所有権移転登記手続請求訴訟を提起し、仮処分によりプレハブやバリケードを撤去して執行官に保管させた。
Iは、反訴により本件土地のIの所有権確認および損害賠償請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 原審 高松高等裁判所
松山市勝訴。
松山市は、①第1譲受人Eは背信的悪意者でありその権利を転々譲渡により承継した転得者Iに対し、登記なしに本件土地所有権を対抗(主張)できる。②真正なる登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続請求権も認められる。
⑵ 最高裁判所
①松山市がIに対し登記なしに所有権を対抗できる点は認め、②所有権移転登記手続請求権については、Eが背信的悪意者であるとしても、点々譲渡による転得者であるIが背信的悪意者であるとは限らず、そうでなければ松山市はIに対し所有権を対抗できないとして、その点の審理を尽くさせるために原判決を破棄し差し戻した。
4 コメント
差戻し後の裁判はどうなったことでしょうか。松山市とIとの和解の成立あるいは現状市道であることが明らかである土地にプレハブを設置しバリケードを築いたIも背信的悪意者であるという理由でI敗訴でしょうか。
以上
本件判決での土地の表示の文言
「原判決別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という)は、もとD が所有していた松山市a番町b丁目(表示変更前の同市c町)d番、e番合併一の土地(以下これを「合併一の土地」と表示することとし、「合併六、七の土地」)も これに準ずる)の一部であったところ」
判例
平成5(オ)956 公道確認等
平成8年10月29日 最高裁判所第三小法廷 判決
原審 高松高等裁判所
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