1 ポイントは何か?
- 行政機関個人情報保護法に基づく開示請求
(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律| e-Gov法令検索)
- 国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求
(国家賠償法 | e-Gov法令検索)
2 なにがあったか?
Aが行政機関個人情報保護法(旧)に基づき、東京矯正管区長Bに対し、Aが東京拘置所の未決拘禁者であったときに所内で受けた診療の記録(以下、「本件情報」という。)の開示を求めたところ、同法45条1項に基づき全部不開示とする決定(以下、「本件決定」という。)が下された。
Aは、国に対し、本件決定の取消しと国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求をした(国家賠償法 | e-Gov法令検索)。
3 裁判所は何を認めたか?
⑴ 第1次第1審地方裁判所 A敗訴。
⑵ 第1次原審東京高等裁判所 A敗訴。
⑶ 第1次最高裁判所 原審判決を破棄し差戻した。
本件情報は同法45条1項に当たらず、同法12条1項の開示請求の対象になる。
◎ これを受けてBは、本件決定の全部を取り消し、Aに本件情報を開示した。
したがって、Aの国に対する国家賠償請求だけが残った。
⑷ 第2次原審東京高等裁判所 Aの国家賠償請求を一部認容。
全国の矯正管区長に対し同法45条1項の解釈について違法な指針を示した法務省担当者Cらに職務上の注意義務違反があり、したがって本件不開示決定が国賠法1条1項の適用上違法であると認定した。
⑸ 第2次最高裁判所(本件判決) 国敗訴部分を破棄し、Aの控訴棄却。
本件決定を下したBに同法45条1項の解釈の誤りがあったが、Bが通常尽くすべき注意義務に違反して漫然と判断したとはいえず、CらがBに対し違法な指示をした事実もないので、国賠法上の違法はない。
4 コメント
Aは、第1次最高裁の直後のBの対応で、本件情報の入手ができた段階で勝利しています。
もし、その時Bがそのような対応していなかったら、第2次高裁や第2次最高裁でどうなっていたか。Aの情報開示請求も国賠請求も両方とも認められていた可能性もあります。
国賠請求だけが残りましたが、第2次高裁にはCとBは組織上一体との考えがあり、第2次最高裁はそうではなくCも責任ある判断主体という前提で検討しました。国賠法1条1項の違法の意味や職務上の注意義務違反をどこのセクションでとらえるかによって違ってくるのだということがわかりました。Aから見ると、最高裁でうまく逃げられてしまったというところ。
判例
令和4(行ヒ)296 情報不開示決定取消等請求事件
令和5年10月26日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判
原審 東京高等裁判所