【刑事事件:個人から法人への訴因変更を許可せず、個人を無罪とする判決を下した事件】

1 ポイントは何か?

  本件は、無許可漁業を行ったのは個人か、その被告人個人が代表者を務める法人かによって、基本的事実関係が異なり、公訴事実の同一性もないかが争われ、高等裁判所は原審地方裁判所の判決を破棄し、被告人の無罪を認めた事例である。

2 何があったか?

被告人個人が代表者を務める法人C水産会社がA船を用いて無許可漁業を行い、マグロ類約8トンを水揚げした。

  

3 裁判所は何を認めたか?

高等裁判所は原審地方裁判所の判決を破棄し、被告人を無罪とした。

個人とその個人が代表者を務める法人とでは、その行為の効果の帰属する主体を異にするし、没収、追徴等のいわゆる附帯の処分にも影響するのであるから、両者は基本的事実関係が異なり、公訴事実の同一性もないものとする。

4 コメント

本お役立ち情報欄でも取り上げた最高裁令和3年(あ)第1752号宅地建物取引業法違反被告事件令和5年10月16日第一小法廷決定では、この判例を引用して判例違反を主張した弁護人に対し、原判決は所論の点について何ら法律判断を示していないから弁護人の主張は前提を欠くとする。しかし、最高裁は職権で本判例とは逆の判断をした。したがって、同最高裁判例の考え方で本件事件を判断すると、基本的事実関係は同一であるとして訴因変更が許可され、C水産会社が有罪判決を受けることになろう。

判例

仙台高等裁判所昭和39年(う)第14号同40年5月10日判決

・高等裁判所刑事判例集18巻3号168頁

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