【土地境界事件:建物の2階外壁、吊看板、庇などが隣地上にあった事件】

1 ポイントは何か?

  本件は隣接地所有者同士の争いである。土地所有者Bが所有する建物の2階外壁、吊看板、庇等の構造物がAの所有土地上にあった。AからBに対して、土地所有権に基づく妨害排除請求権により各構造物の撤去を請求した。反訴として、BからAに対して、Bが短期取得時効の援用によりAが所有する土地のうち各構造物の下の範囲を取得したとして土地所有権に基づく妨害排除請求としてAからBに所有権移転登記手続きを行うよう請求した。裁判所は、各構造物のうち2階外壁下の土地のみ公道に至るまでBの時効取得を認め、Aに対しBへの所有権移転登記手続きを命じ、吊看板と庇の下の土地はBがAに明渡すよう命じた。

2 何があったか?

  Aが所有する土地eから分筆した土地1及び土地2が、Bが所有する土地kと隣接し、Bは土地k及び土地hを敷地として建物を所有している。Bは、その建物の店舗部分でラーメン店を営んでおり、同店舗2階の外壁部分が土地2の上に、吊看板と庇が土地1の上にあった。AからBに対して、土地1及び土地2の所有権に基づく妨害排除請求としてそれらの構造物の撤去を求めた。反訴としてBからAに対して、Bが短期取得時効の援用により土地1及び土地2を取得したとし、それらの所有権による妨害排除請求としてAからBへの所有権移転登記手続きを請求した。

3 裁判所は何を認めたか?

裁判所は、土地2についてAからBへの所有権移転登記手続きを命じ、土地1についてはBに対し、吊看板と庇の撤去し明け渡すよう命じた。

Bが土地2を善意無過失で所有の意思をもって10年以上占有継続しており、取得時効の援用は権利濫用に当たらないとした。

(判決文抜粋)

「被告は、平成16年6月30日から平成26年6月30日経過時までの間、本件店舗及び本件敷地を所有し、本件店舗をラーメン店として使用及び占有していたのであるから、被告は、本件建物の2階外壁の直下に相当する部分及び同部分から北側道路(K56とF2を結ぶ直線)に接続する長方形部分を、本件敷地と一体の本件店舗の敷地として、排他的に支配していたものと評価できる。すなわち、被告は、上記期間、本件係争部分のうち本件土地2を占有していたと認められる。」

「本件係争部分のうち本件土地2を除く部分についてみるに、同部分の直上にある本件立体看板及び本件庇は、その設置の経緯及び構造などからして、本件店舗の主要構造部分とみることはできない。また、本件店舗に来店した客は、平成16年6月20 日から平成26年6月30日経過時までの間、上記部分を使用することがあったが、同部分は常に外部と隔離されていたわけではなく、第三者が同部分を通路として使用することがあった。」

4 コメント

  土地の取得時効の要件である土地の占有状況、過失、権利濫用等を具体的に認定した事例である。

判例

令和2(ワ)9357  所有権に基づく妨害排除請求事件
令和5年10月26日  大阪地方裁判所

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