【刑事事件:IP電話回線利用サービスが特殊詐欺に利用された事件】

1 ポイントは何か?

  本件の被告人は、IP電話回線利用サービスの提供会社の業務全般を統括していたが、従業員らと共謀し、氏名不詳者らによって特殊詐欺に利用されることを認識しながら同サービスを提供したとして、詐欺の幇助罪に該当することを認めた事件である。

2 何があったか?

  特殊詐欺グループにIP電話回線利用サービスを提供する業者は、「道具屋」などと呼ばれている。

  本件被告人は、全国の警察から捜査関係事項照会を受けたり捜索を受けたりしていたのに、本人確認を徹底するなどといった根本的対策をとることなく、氏名不詳者らにIP電話回線利用サービスを提供していた。

3 裁判所は何を認めたか?

  弁護人は、被告人が氏名不詳者らの本人確認を行わずにIP電話回線利用サービスを提供したことを問題にするのであれば、電気通信事業法など関係法令の刑罰規定によるべきであると主張したが、裁判所は詐欺罪の幇助罪と認定した。

  詐欺罪の幇助罪の刑は5年以下の懲役である。原審である広島地方裁判所令和3年(わ)第428号の処断刑は、裁判所の裁判例検索に掲載されていないので不明であるが、3年の実刑もありうると思われる。本件は上告されると思われるので、いずれ明らかとなる。

  

4 コメント

  未必の故意と相当因果関係が認定できるかという点に疑問が残るが、裁判所の判断は相当に高い蓋然性に基づいている。

  最高裁の判断が待たれるところである。

オレオレ詐欺を防止するためにも、電気通信事業法と関係法令を学ばなければならない。

判例

令和5(う)16  詐欺幇助被告事件
令和5年10月31日  広島高等裁判所 

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