【刑事事件:覚せい剤の不正な輸出入や製造を業として行ったとして処罰された事件】

1 ポイントは何か?

  覚せい剤取締法41条1項は、不正輸出入、製造等を罰し、営利目的があった場合は刑が重くなるが、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下、「特例法」という。)5条(※)は、業として行った場合にさらに加重する。業として不法輸入等を行った場合の最も重い刑は無期懲役及び1000万円以下の罰金である。本件は、覚せい剤の不正輸出入ないし製造を行った被告人に営利目的があっただけでなく、業として行ったと認定されて特例法が適用された。

 (※本最高裁判決では特例法8条としているが、現在の特例法8条は、薬物犯罪を犯す意思を持って予備的に規制薬物を輸入等する罪の規定となっている。)

2 何があったか?

  被告人は、覚せい剤の不正輸出入あるいは製造等(被告人の人数、組織、及び具体的行為は最高裁の本件判決文だけでは明らかではない。)を業として行ったとして特例法及び覚せい剤取締法違反で起訴された。また銃砲や火薬類の不法所持等でも起訴された。

  被告人は、「業として」との文言はあいまい不明確で憲法31条の定める法定手続の保障違反であると主張した。

3 裁判所は何を認めたか?

  被告人は業として不法輸入等を行った罪で有罪とされた。

最高裁判所は、「業として」との文言はあいまい不明確とは言えないとした。

4 コメント

  「営利目的」の加重要件がすでにある場合に、「業として」をさらなる加重要件として規定するのであれば、それは単なる営利目的とどう違うのか、闇バイトを組織する犯罪集団のような、闇事業目的の永続性や組織性など必要としないのかなどを国会で議論し、法律に規定し、その要件を明らかにするべきではないか。

  なお、薬物犯罪は、国際的に増加傾向にあると思われるので、対策が必要であるが、刑罰要件は、できる限り、明確でなければならない。

判例

平成9(あ)804  国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反、覚せい剤取締法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反

平成9年11月14日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  名古屋高等裁判所

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