1 ポイントは何か?
名古屋市情報公開条例(*)は、名古屋市が保有する情報の公開を図り、市民の知る権利を守るために制定された。但し、同条例7条が定める非公開情報に該当する場合は除かれる。本件は、名古屋城天守閣木造復元事業に関し、市民団体が市に対し情報開示を求め、その一部が認められた事件である。
*名古屋市:名古屋市情報公開条例(市政情報) (city.nagoya.jp)
2 何があったか?
名古屋城は、太平洋戦争の空襲で石垣を残して焼失し、戦後、鉄筋で再建されていた。名古屋市は、平成21年に名古屋城天守閣木造復元事業の全体会議を立ち上げ、検討を開始し、平成29年に竹中工務店と基本協定を締結したが、文化庁との意見交換後に、地下遺構の発掘調査や石垣の再確認のために、工期を延期することになった。市民団体が、平成30年に、名古屋市に情報公開請求を行い、名古屋市は一部公開したが、残りの公開を求めて裁判が提起された。
3 裁判所は何を認めたか?
市民団体が公開を求めた文書は60件あり、名古屋地方裁判所は、文書番号1、6~9、12~15、19の一部、29~34、47~50の公開を命じた。
残りの文書の公開は認めなかった、その理由は、法人利益侵害情報、公共安全情報、事務支障情報、意思形成過程情報などに当たるというものであった。なお、2、10.11、16、17、35、38、51は、名古屋市長の発言であり、本来は公開されるべきものであったが、文化庁職員との意見交換に関するもので、特に非公開とされた。
4 コメント
最近の木造建築技術のさらなる進歩を考えると、名古屋城の木造再築計画は素晴らしいアイデアであると思われる。しかし、本件情報公開請求では、名古屋市長の発言を公開するか否かは、裁判所も悩んだことと思われる。意思形成過程を混乱させることは妥当ではない。当該文書が破棄されず、数十年後かに公開される時があれば、今回秘匿を認めたことの適否が明らかになるだろう。今、必要なことは、名古屋市民による名古屋城の木造再建計画そのものの適否や進め方についての公開討論であろう。
判例
平成31(行ウ)11 行政文書非公開決定処分取消請求事件
令和4年3月30日 名古屋地方裁判所