【国家賠償、不法行為損害賠償事件:森友学園への国有地払下げで、財務省理財局長らの国会対応との整合性をはかるため、上司から文書改ざんを指示された近畿財務局職員が、過労等で自殺した。その妻が、国と理財局長を相手に損害賠償請求をした】

1 ポイントは何か?

  森友学園は小学校の敷地用に国有地の払い下げを受けたが、代金が相当に低く、国会で、内閣総理大臣をはじめ厳しく追及された。財務省理財局長の国会対応との整合性を図るため、上司から文書改ざんを指示された近畿財務局職員が、過労、精神的負荷等で自殺した。本件は、その妻が、国に対する国家賠償請求及び理財局長に対する不法行為損害賠償請求をした事件である。しかし、国家賠償請求が認められる場合は、公務員個人に対する不法行為損害賠償請求はできないとの多くの最高裁判所判例がある。

2 何があったか?

  国(近畿財務局長)は、森友学園に対し、平成28年6月20日、国有地を売却した。同29年2月9日、「売却額は近隣国有地の10分の1」、「同地に小学校が開校する予定」、「名誉学長は首相の妻」等の多くの報道がされた。そのために、財務省理財局長Bらは、国会対応に追われることになった。Aは、当時、近畿財務局の上席国有財産管理官であった。Aは、上司から、本件決裁文書中の一部の文書の修正(改ざん)を指示された。それは、理財局長の国会対応との整合性を図るためであった。Aは、同業務による過労、業務自体に対する疑問や反発による精神的負荷から同年7月上旬頃にうつ病を発症し、同月20日以降病休を取得し、同年11月18日から病気休暇となった。そして、その後、自殺した。

Aの妻Cが、国に対する国家賠償請求、及び、Aの上司によるAへの文書改ざん指示の方向性を決定したB(理財局長から国税庁長官を経て退職した)に対する不法行為損害賠償請求を単純併合する訴訟を提起した。

3 裁判所は何を認めたか?

  国家賠償請求については、国が認諾し、Cの請求通り認められた。

  Bに対する不法行為損害賠償請求については、最高裁判所の確立された判例があり。それに基づき、棄却された。

4 コメント

  国家賠償請求が認められる場合、職務に関して不法行為を行なった公務員個人に対する不法行為損害賠償請求は認められないとするのが最高裁判所の確定した判例である。しかし、公務員が個人責任を負わないことが本当に国家社会の維持のために必要なのか。この際、考え直してもよいのではないか。

判例

令和5(ネ)57  損害賠償請求控訴事件
令和5年12月19日  大阪高等裁判所  棄却