【刑事事件:被告人が拡大自殺で妻子を死傷させた事件】

新潟地方裁判所 令和5(わ)196 殺人、殺人未遂 令和6年5月20日判決



1 ポイントは何か?


  心神喪失か


2 何があったか?


  被告人は、経済的不安から慢性ストレス状態に陥り、自分が自殺すると二男と妻が生活に困ると考えて拡大自殺を図り、包丁で二男を殺害し、妻に前置3か月の傷害を負わせた。
  検察官は、本件犯行の計画性の高さから、被告人は完全責任能力を有していたとして、懲役14年、包丁の没収を求刑した。
  弁護人は、被告人が平素は几帳面で優しい性格であり、本件犯行当時は、抑うつ障害の影響により是非善悪の判断能力及び行動制御能力を失い、心神喪失の状態であったと主張した。
  精神科医の鑑定では、被告人は、本件犯行の1週間前から抑うつ障害で、中等度のうつ病に相当する抑うつ状態に陥っていた可能性があるとされた。


3 裁判所は何を認めたか?


  被告人を懲役4年、包丁は没収とした。被告人は、自己の行動を制御する能力が著しく低下した状態であったが、欠けていたとまではいえないとした。


4 コメント


  一家の大黒柱である者の精神異常に対して、家族はどうすべきであったか。協力して貧困に立ち向かうとともに、県や市、警察等に相談する方法もあっただろう。精神保健精神障碍者福祉法もある。
以上