1 ポイントは何か?
本件は、建物の贈与契約の取消しの可否に関する事件である。裁判所は、建物の贈与契約についての民法550条但し書きの解釈として、建物の所有権が移転しても、占有の移転の前であれば、贈与契約を取消すことができるとする。そして、本件では、AがB名義で建物を建設し、出来上がりと同時にBに贈与し、Aが1年間無償で使用した後Bに明け渡すと約束したという認定事実に基づいて、Bは、Aが建設した建物の所有権を出来上がりと同時に取得しただけでなく、その占有も同時にBに移転しているから、Aはもはや贈与契約の履行を終わっており、取消すことはできないと認めた。
2 何があったか?
AがB[名義で建物を建設し、出来上がりと同時にBに贈与することを約束し、Aが同建物を1年間無償で使用した後Bに明け渡すこと約束した。
しかし、Aは、同建物を建設後、A名義で所有権保存登記をし、贈与契約を取消し、B名義の所有権の登記と引渡しを拒んだ。BがAに対し、同建物の引渡しと、A名義の所有権保存登記の無効確認を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
B勝訴。
土地の贈与契約は、占有が移転するまで履行が終わったとは言えず、取消しが可能である。
本件では、AとBの贈与契約は、AがB名義で建物を建て、出来上がりと同時に所有権がBに移転するというもので、Bは出来上がりと同時に所有権を取得している。のみならず、Aの占有も同時にBのための占有に変わっており、Bは占有も取得しているので、もはや同建物の贈与契約は履行が終わっており、取り消すことはできない。
4 コメント
本件は、AとBの建物贈与契約によるAのBに対する建物所有権移転と占有移転の意思表示が証明されたことで決着がついた。Aの自己名義での所有権保存登記は違法であり、贈与の取消しの抗弁は無効であった。
本件は、最高裁第2小法廷昭和38(オ)1066事件の判決で引用された。
判例
昭和29(オ)195 建物返還並に登記無効等請求
昭和31年1月27日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却
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