損害賠償請求事件
鹿児島地裁平成31年4月16日判決
福岡高裁宮崎支部令和3年2月10日判決
(判例時報2526号50頁)
1 ポイントは何か?
- 中学生は、吹奏楽の部活が原因で適応障害になったのか。
- 中学の教諭らの教育上の配慮義務違反の有無。
- 公立中学校の教諭の部活指導は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たり、同中学校を設置した市の、同法に基づく責任が発生するのか。
2 何があったか?
Y市が設置した公立中学校で、吹奏楽の部活に熱心な中学生であったX1が、大会に出場するための厳しい練習に参加していたが、その途中で頭痛、感覚過敏、学習不安などを訴え、受診したところ、医師が適応障害と診断し、診断書に、「学校の先生方へ」として、「原因のひとつとして、部活のスケジュールがあまりにも過密であることが考えられます。本人は部活を続けたいとやる気はあるようですが、身体的にも精神的にも症状がみられ、これ以上無理はさせられない状態と考えられます。当院では通院して内服治療を開始しましたが、学校においても配慮していただく必要があると考えます。」と記載した。
X1は、その後も部活を続けたが、やがて、退部し、不登校となった。
X1と、その両親X2及びX3が、地裁に、Y市を被告として、国賠法1条に基づく損害賠償請求事件の訴訟(請求額はX1が550万円、X2が220万円、X3が110万円で、年5分の遅延損害金を付加する。)を提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
地裁では、X1らが敗訴。同公立中学校の教諭らには、配慮義務違反はなかったと判断した。
高裁では、X1が一部勝訴(認容額は55万円及び遅延損害金)。同中学校の教諭らに、配慮義務が足りなかった点があることを認めた。
4 コメント
学校の部活の、大会に出場するための長期にわたる厳しい練習では、ひとりひとりの生徒に、このような心身の問題が生ずることもありうる。学校には、このような生徒に対して、個別に教育上配慮する法的義務がある。
学校は、生徒の家族や、生徒が通院する医師とも連絡を取り合いながら、適切な指導を考えなければならない。
最近、部活を、学校から切り離し、地域の活動に移すといううごきもあるようだ。しかし、私などは、部活が、学校の楽しい思い出の大半を占めているので、教室の授業だけでは、退屈で物足りないのではないかと思う。
市が、学校の部活とは別に、地域の部活も活発に行われるようにしていけば、生徒が、学校の部活で培ったものを、卒業後も継続して、生涯の楽しみとすることもできる。両方とも活発であってほしい。
お子様の教育環境等でお困りの保護者の方
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