【国際事件:米国法人によってウェブサイトで名誉信用を毀損されたとして日本の裁判所に損害賠償請求訴訟を申立てた事件】

1 ポイントは何か?

  日本の裁判所の裁判管轄権

2 何があったか?

  米国法人Y社が日本法人X社及びその子会社A社を相手に米国内の裁判所に損害賠償等請求訴訟を提起し、X社およびA社も同じ裁判所に損害賠償請求等の反訴を提起していた。

  Y社は、そのウェブサイトに同訴訟に関する英文の記事を掲載した。

  X社およびA社は、Y社を相手に、同記事の掲載によって名誉信用を毀損されたと主張して日本の裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。

3 裁判所は何を認めたか?

  日本の裁判所は、名誉信用の毀損という結果が日本国内で発生した場合(民事訴訟法3条の3第8号)であっても、日本の裁判所で裁判を行うことが当事者間の衡平を害し、又は適正迅速な審理の実現を妨げることになる特別の事情(同法3条の9)があるか否かについて判断し、X社およびA社の請求を却下した。

米国内ですでに事実関係がほとんど重なる裁判が行われているのにあえて日本の裁判所に関連する裁判を提起したことが日本の裁判所の裁判管轄権を認めない特別の事情にあたると認定されたものである。

4 コメント

  ウェブサイトへの書き込みは世界中どこでも閲覧できるので、どこの国の裁判所に損害賠償請求が起こされるかわかりませんね。書き込みには気を付けましょう。

参考 民事訴訟法 | e-Gov法令検索

損害賠償請求事件

最高裁判所平成28年3月10日判決(上告棄却)

 原審 東京高等裁判所

裁判所HP裁判例検索