【抵当権:抵当権を実行しようとしたら建物に不法占拠者がいた事件2】

1 ポイントは何か?

  短期賃貸借契約

  抵当権者による短期賃貸借契約の解除

  抵当権者による借主に対する抵当建物の明け渡し請求

2 何があったか? 

抵当権が設定された建物に短期賃貸借契約設定登記がされ、短期賃借人ないし転借人が同建物を占有していた。抵当権者が抵当権者に損害を及ぼすものとして民法395条ただし書きの規定により解除を求め、解除を条件とする明渡しを求めた。

3 裁判所は何を認めたか?

  短期賃貸借の解除を認め明渡は認めなかった。

 (理由)いわゆる短期賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすものとして民法395条ただし書の規定により解除された場合も、抵当権者は、抵当不動産を占有する賃借人ないし転借人に対し、当該不動産の明渡しを求め得るものではないと解するのが相当である。

4 コメント

 本件判例は、平成11年11月24日最高裁判所大法廷判決(平成8(オ)1697建物明渡請求事件、民集第53巻8号1899頁)で一部変更され、不動産の不法占拠者により抵当権の実行が実際に阻害された場合には所有者に代位し、または、抵当権の妨害排除請求権に基づいて、不動産の明渡を求めることができるという限度で変更された。

 裁判例は、やはり芋づる式にしつこく見て行く必要がある。

判例

最高裁平成元年(オ)第1209号同3年3月22日第二小法廷判決・民集45巻3号268頁 原審 大阪高等裁判所