1 ポイントは何か?
自筆証書遺言は要式行為であり、全文(最近の法改正で、財産目録は別)、日付、氏名を自書し押印しなければならない(民法968条)。本件は、押印の代わりに花押が用いられていたが、押印の要件を満たさないとされた。
2 何があったか?
Aは、自筆証書遺言でXを家督相続人としてa家の家督及び財産を相続焦る旨遺言したが、花押を用い、押印がなかった。Xと他の相続人との間で、争いとなった。
3 裁判所は何を認めたか?
A敗訴。原判決破棄、原審差戻。
「民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及 び氏名の自書のほかに、押印をも要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ(最高裁昭和62年(オ)第1137号平成元年2月16日第一小法廷判決・民集43巻2号45頁参照)、我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。」
4 コメント
最近、印鑑が必要ない場合も増えています。自筆証書遺言でもそうなる時が来るかも。
判例
平成27(受)118 遺言書真正確認等、求償金等請求事件
平成28年6月3日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻 福岡高等裁判所 那覇支部
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