1 ポイントは何か?
自筆証書遺言は方式行為であり、全文、日付、氏名を自書しなければならないが、遺言書に押印がなくとも封筒の封じ目に押印がある場合に有効と認められる場合がある(最高裁平成6年6月24日第2小法廷判決・集民172号733頁参照)。本件は、遺言書に氏名の自書と押印がなく、封筒も一体として作成されたものとは言えないとして無効とされた。また、遺言無効確認訴訟は固有必要的共同訴訟ではないとされた。
2 何があったか?
Aは、カレンダーの紙の裏を利用して遺言書を作成したが、氏名の自書と押印がなかった。封筒に入れられ封印された状態で発見された。Aの妻Bが。AとBの長男Cに対し、本件遺言書の無効確認を求めた。
3 裁判所は何を認めたか?
A勝訴。本件遺言書は無効。
遺言無効確認の訴えは、遺産の所有権不存在確認に似ているので固有必要的共同訴訟に当たらないから(最高裁昭和 56年9月11日第2小法廷判決・民集35巻6号1013頁参照)、AのCに対する訴えは適法である。
本件遺言書と封筒が一体のものとして作成されたと認める証拠がない。
4 コメント
遺言書無効確認訴訟は固有必要的共同訴訟ではないので、相対的解決を図ればよいが、関係者全員を相手にしなければ問題が解決しない場合もあろう。
判例
平成18(ネ)1825 遺言無効確認請求控訴事件
平成18年10月25日 東京高等裁判所 破棄自判 東京地方裁判所
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