【遺言の効力:遺言者が本文、氏名を自書し押印し、その8日後に当日の日付を自書した自筆証書遺言書の効力が争われた事件】

1 ポイントは何か?

  遺言書の日付はその成立時期を明確にするためであるから真実遺言書が成立した日付であるべき。では、遺言書は、いつ成立したとみるべきか。本事例では、自筆証書遺言の遺言者が全文、氏名を自書し押印し、後日に日付を自書したが、法の趣旨から日付を自書した日に同遺言書は完成し、真実遺言が成立した日にちであるから有効とした。

 2 何があったか?

Aは、自筆証書遺言の全文、氏名を自書し押印し、後日に日付を自書した。その効力が争われた。遺言の内容は、Bらに遺贈ないし相続させるというものであった。

Dが、日付を後日に記入することは、自筆証書の要式行為に反し、このような遺言は無効であると主張した。

 3 裁判所は何を認めたか?

   D敗訴。

「民法968条によれば、自筆証書によつて遺言をするには、遺言者がその全文、日附及び氏名を自書し印をおさなければならず、右の日附の記載は遺言の成立の時期を明確にするために必要とされるのであるから、真実遺言が成立した日の日附を記載しなければならないことはいうまでもない。しかし、遺言者が遺言書のうち日附以外の部分を記載し署名して印をおし、その8日後に当日の日附を記載して遺言書を完成させることは、法の禁ずるところではなく、前記法条の立法趣旨に照らすと、右遺言書は、特段の事情のない限り、右日附が記載された日に成立した遺言として適式なものと解するのが、相当である。」

4 コメント

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本判例は、最高裁判所平成31(受)427事件で引用された。

判例

昭和51(オ)978  遺言無効確認等(本訴)・遺言有効確認等(反訴)請求

昭和52年4月19日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所

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