【相続放棄事件:判決正本が被告と10年音信不通であった子に対し送達された事件】

最高裁判所第二小法廷  昭和57(オ)82  貸金等 昭和59年4月27日 判決
 民集第38巻6号698頁


1 ポイントは何か?


民法916条の相続放棄の熟慮期間3カ月の始期。


2 何があったか?


Bとその推定相続人Dは10年以上音信不通であった。XはAを借主として金
銭消費貸借契約を締結し、Bを保証人とする連帯保証契約を締結した。
XはBを相手に連帯保証債務の履行を求める訴訟を提起した。Bは判決前に死
亡した。XがBからDへの訴訟承継の手続きを取り、判決正本が裁判所からD
に送達された。Dはこれに対し控訴するとともに、家庭裁判所に相続放棄の申
述を行い受理された。
DはBの死亡は知っていたが、その連帯保証債務の存在は知らなかったと主張
した。


3 裁判所は何を認めたか?


D勝訴。
民法916条の「熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識し
た時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当であ
る。」


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相続放棄の熟慮期間は相続財産調査のため。