1 ポイントは何か?
車の購入名義人の交通事故損害賠償責任。
2 何があったか?
生活保護自給者であったAが、弟Yの承諾によりY名義で車を購入した。
Aがその車で交通事故を起こした。
被害者Xは、Yに交通事故の損害賠償請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
原審広島高裁岡山支部は、Yは自動車損害賠償保障法第3条に規定する「運行供用者」に当たらないとして、Xの請求を棄却した。
これに対し、最高裁は、原判決を破棄し、広島高等裁判所に差戻した。Yは、Aに名義を貸すことを拒むこともできたのに、生活保護受給者であるAが自動車を購入し、使用することを容易にしたのであるから、社会通念上、その自動車の運転による危険が発生しないように監視、監督する立場にあり、自動車損害賠償保障法第3条に規定する「運行供用者」に当たるので、Xが被った損害についてさらに審査を尽くさせる必要があるとの理由である。
4 コメント
弟が、生活保護受給者の兄に同情して名義を貸したのだと思います。しかし、交通事故が発生すると、本件で最高裁判所が判断したように、名義貸人が自動車所有者の責任を負うこともありえます。その場合、もしかしたら自動車保険が使えない、あるいは、損害保険会社から自動車保険で支払った分の請求を受けるということもありえないではありません。しかも、弟が生活保護受給者の兄に請求することは難しいでしょう。名義を貸すべきではありません。
以上
損害賠償請求事件
最高裁判所第1小法廷平成30年12月17日判決(破棄差戻)
原審 広島高等裁判所岡山支部
裁判所HP裁判例検索
088189_hanrei.pdf (courts.go.jp)
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