1 ポイントは何か?
国籍法は、出生、認知、帰化の3種類の国籍取得方法を定めている。認知による国籍取得は、現在の国籍法では、日本人の親が18歳未満の子を認知し、法務大臣に国籍取得届をすればよい(2条1号)。しかし、旧規定では、認知するだけでは足りず両親が婚姻することも必要であった。本判決は、このような旧規定のもとで、両親が婚姻しなくても日本人の親により認知された18歳未満の子の日本国籍は認められるとした最高裁判所の大法定判決である。かくして国会でもその後議論が行われ、現在の規定に法改正された。
2 何があったか?
日本人の父親とベトナム人の母親との間に生まれた子が、父親の認知により、法務大臣に日本国籍の取得を届出たが、法務大臣は、当時の規定に基づいて同届出を拒否した。
子が、日本国に対し、日本国籍を取得したことの確認を求めて訴訟を提起した。
3 裁判所は何を認めたか?
最高裁判所は、憲法が定める法の下の平等原則に基づき、両親が婚姻しなくても、日本人の親が18歳未満の子を認知し法務大臣に国籍取得届をすれば日本国籍を取得することを認めた。
4 コメント
国家主権の立場から、国籍要件は国が国会の議決によるべきとして反対する裁判官もいた。しかし、多数意見は、国民の平等原則を重視し、早急な救済を図るとともに、条文の両親の婚姻要件の文言のみを限定して無効とすることで、行政が混乱しないようにした。
判例
平成19(行ツ)164 国籍確認請求事件
平成20年6月4日 最高裁判所大法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所