最高裁判所第一小法廷 令和4(受)2281損害賠償請求事件令和6年7月11日判決( 破棄差戻
)民集78巻3号921頁
原審裁判所名東京高等裁判所 令和3(ネ)2792 令和4年7月7日判決
1ポイントは何か?
不起訴合意特約の効力
2何があったか?
亡Aは世界統一家庭連合(以下、「Y」という。)に1億円以上の寄付をした。亡AとYは
不起訴合意を締結していた。
亡Aの相続人Xが、亡Aの寄付はYの信者であるY1らの違法な勧誘に基づくものであるとし
てY及びY1らに対し損害賠償請求をした。
3 裁判所は何を認めたか?
東京高裁は、本件不起訴合意は公序良俗違反には当たらないのでXのY及びY1らに対する
請求には権利保護の利益がないとして却下した。
Xが上告した。
最高裁は、原判決のY及びY1に対する損害賠償請求を却下した判決部分を破棄し、原審委
差し戻した。
「不起訴合意は、それが公序良俗に反する場合には無効となるところ、この場合に当たる
かどうかは、当事者の属性及び相互の関係、不起訴合意の経緯、趣旨及び目的、不起訴合
意の対象となる権利又は法律関係の性質、当事者が被る不利益の程度その他諸般の事情を
総合考慮して決すべきである。」とし、亡AとYの不起訴合意は公序良俗に違反し無効で
あるとしてXの権利保護の利益を認めた。そして、原審にY1等の勧誘が社会的通念上相
当な範囲を逸脱するか否かについて審理を尽くさせるために差し戻した。
4 コメント
不起訴合意については、その有無(京都大学吉田寮事件、チッソ事件)、公序良俗違反性
(某協会聖本等事件)、合意の範囲(三協製薬事件)などが争われたケースがある。明確
な合意にし、その締結、目的、内容、効力等について十分に理解させる必要がある。
なお、渡邊博己先生のノート渡邊博己|noteの
宗教団体への献金違法勧誘と不起訴合意|渡邊博己を参照されたい。