【自動車所有権:自動車を、引渡し判決の仮執行宣言で回収した事件】

1 ポイントは何か?


  自動車の譲渡に即時取得(民法192条)の適用はあるか。


2 何があったか?


  X社が昭和28年1月13日、本件自動車(以下、「自動車」という。)を登録した。その後、登録の変更はない。
  X社がKに、昭和28年1月14日、自動車を代金完済までの所有権留保付きで売り渡したが、Kは代金の一部を支払ったのみで、自動車をBに使用させていた。
  Bは、A及びFに、自動車を信託譲渡したうえ、代物弁済した。
  A及びFは、Hに自動車を代物弁済し、Hは、Jに自動車を保管させた。
  Xは、昭和28年6月17日、Bに対する仮処分決定を取得したが、同月20日、自動車の所在が分からず。執行不能に終わった。
  Xは、A,B、C,Eを共同被告として、自動車の返還又はそれに代わる損害賠償請求事件を提起した。
  A,B、C,Eは、A及びFが自動車所有者はBであると善意無過失で信じたのであるから即時取得し、Xはもはや自動車所有者ではない、A及びFはHに廃車目的で自動車を譲渡したのだから、所有権の移転に登録は必要ない、C及びEは自動車に無関係である等主張した。


3 裁判所は何を認めたか?


  X勝訴。
  自動車の譲渡には登録が必要であり(道路運送車両法4~6条)、即時取得の規定の適用はない。廃車目的の譲渡であっても抹消登録(同胞15条)しなければならないのにしていないし、自動車はその後も運行の用に供されていた。C及びEも、A及びFと共同して自動車を占有していたと認めた。 


4 コメント


最高裁判所第二小法廷判決昭和61(オ)1499 損害賠償請求上告事件、昭和62年4月24日判決070495_hanrei.pdf (courts.go.jp)に、「道路運送車両法による登録を受けている自動車については、登録が所有権の得喪 並びに抵当権の得喪及び変更の公示方法とされているのであるから(同法五条一項、 自動車抵当法五条一項)、民法一九二条の適用はないものと解するのが相当」とある。
登録のない自働車には即時取得の適用がありうる。真の所有者でない者が所有者として登録し占有していた場合に、その登録を信じて自動車を取得した第三者の保護も問題となり、様々な学説がある。  

判例

昭和29(ネ)404  自動車所有権等確認事件
昭和30年5月25日  福岡高等裁判所  棄却