【家庭裁判所で養親がしたすでに死亡した養子との離縁の許可申立が却下され、高裁の抗告手続で逆転し許可された事例】

〇大阪高裁令和3年3月30日決定、判例時報2519号49頁

1 ポイントは?

  家庭裁判所の死後離縁許可審判の基準はなにか。。

2 何があったか?

  養親と死亡した養子の子が家業の経営で対立し、関係が悪化したことから、養親が養子の子との法定親族関係を切るために、神戸家庭裁判所姫路支部に、死亡した養子との離縁の許可を申し立てた。

それに対し、養子の子が利害関係参加人として家庭裁判所の審判手続に参加し、許可申立の却下を求めた。家庭裁判所は、利害関係参加人の主張を入れて養親の申立を却下した。そこで養親が抗告人として大阪高裁に抗告した。

 養親(抗告人)――死亡した養子――養子の子(利害関係参加人)

3 大阪高裁は何を認めたか?

  大阪高等裁判所は、家庭裁判所の審判を取消し、養親が申立た死亡した養子との離縁を許可した。

その理由は、養子縁組は個人的関係だから、真意に基づく申立である限り、社会通念上容認しがたい事情がある場合を除いて許可すべきであるから。

死後離縁が許可された結果、養子の子は養親との法定親族関係を失い、死亡した養子を代襲して養親を相続する権利を失った。

4 コメント

  養子が存命中の裁判での離縁は重大な事由がなければ認められないので、養子が死後の離縁は、離縁が個人的関係だから養親の真意だけが尊重されるという判断基準に、死亡した養子の生前の気持ちは同だったのだろうかと釈然としない気持ちを抱く方もおられることだろう。

大阪高裁は、死後離縁を不許可とすべき社会通念上容認しがたい事情の例として、養子の子が未成年で生活困難となるような場合をあげている。生存している者同士の間での調整を図ろうという姿勢である。それも大切だろう。

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