【地方自治:自治会の集会所建設の事例、最高裁の結論】

損害賠償請求事件

最高裁第2小法廷 平成23年1月14日判決

081008_hanrei.pdf (courts.go.jp)

原 審 大坂高等裁判所平成20年6月27日判決

第1審 奈良地裁 平成19年2月28日判決

1 ポイントは何か?

町長の裁量権

2 何があったか?

第1審(奈良地裁平成19年2月28日判決)の裁判例要約を参照してください。

Xは、斑鳩町の執行機関である町長Bに対し、個人としてのBとZ自治会の会長である個人Dに対して3694万6899円の損害賠償を請求するよう、また、予備的に、Z自治会に対して同額の不当利得返還請求をするよう求めた。

3 裁判所は何を認めたか?

  •  第1審奈良地裁は、Xの請求を棄却した。
  •  原審大阪高裁は、第1審判決を変更し、斑鳩町執行機関、町長Bに対し、「当該職員」Bに対して2194万6899円の損害賠償請求をするよう命ずる判決を下した。

町長Bが地方自治法242条の2第1項4号の「当該職員」に該当することで、町の執行機関である町長Bから「当該職員」である個人Bに対し損害賠償請求をするよう求める住民訴訟の要件が成立し、町長としての権限を濫用して町に損害を与えたB個人に対して損害賠償請求をするよう求めることができるものとした。

  •  最高裁は、東京高裁の判決を破棄し、Xの控訴を棄却し、第1審のX敗訴の判決を認めた。

同法232条の2にいう「寄付又は補助」には町が所有する土地の無償譲渡も含まれ、町長Bの「当該職員」としての行為は同条の「公益上必要がある場合」に該当し、裁量権の濫用はないとした。

4 参照条文 地方自治法

⑴ (住民訴訟)第242条の2第1項4号

 普通地方公共団体の住民は、・・・ときは、裁判所に対し、同条第一項の請求に係る違法な行為又は怠る事実につき、訴えをもつて次に掲げる請求をすることができる。・・・

四 当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める請求。ただし、当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方が第243条の2の2第3項の規定による賠償の命令の対象となる者である場合には、当該賠償の命令をすることを求める請求

  ・・・(以下略)

⑴―2(職員の賠償責任)第243条の2の2

 会計管理者若しくは会計管理者の事務を補助する職員、資金前渡を受けた職員、占有動産を保管している職員又は物品を使用している職員が故意又は重大な過失(現金については、故意又は過失)により、その保管に係る現金、有価証券、物品(基金に属する動産を含む。)若しくは占有動産又はその使用に係る物品を亡失し、又は損傷したときは、これによつて生じた損害を賠償しなければならない。次に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したものが故意又は重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をしたこと又は怠つたことにより普通地方公共団体に損害を与えたときも、同様とする。

・・・

 支出又は支払

・・・

⑵(寄附又は補助)第232条の2

 普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

5 コメント

 地方自治体の運営と町の自治会の運営をめぐる難しい問題だと思う。自治会、町内会などの活動が活発化することで、さまざまな問題が生ずるが、建設的に議論を積み重ねていくべきだと思う。