【行政処分事件:映画制作会社が映画出演者のコカイン使用による有罪判決にもかかわらず芸術文化振興基金の助成金を勝ち取った事件】最高裁判決

1 ポイントは何か?

  映画制作会社が、独立行政法人日本芸術文化振興会理事長に対し映画の制作についての助成金交付要望書を提出したところ、同会の芸術文化振興基金運営委員会はこれを採択するとの答申をし、内定を通知したのに、理事長が支給しないことを決定したので、映画制作会社が同決定の取消しを求め、同決定が取消された事例である。

2 何があったか?

独立行政法人日本芸術文化振興会法により独立行政法人日本芸術文化振興会(B)が設立され、芸術文化振興基金を設定し、芸術文化振興のために助成金を交付する制度がある。映画制作会社Aが、Bの理事長Cに対し映画αの制作についての助成金交付要望書を提出したところ、Bの芸術文化振興基金運営委員会はこれを採択するとの答申をし、内定を通知したのにCが、映画αに出演した俳優がコカインの使用で懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けたことを理由に支給しないことを決定したので、AがBに対し同決定の取消しを求めた。

3 裁判所は何を認めたか?

  A勝訴。

  第1審地方裁判所はAの請求を認め、原審東京高等裁判所は認めなかったが、最高裁判所は認め、原判決破棄、Bの控訴棄却とした。

(判決文抜粋)

「芸術的な観点からは助成の対象とすることが相当といえる活動につき、本件助成金を交付すると当該活動に係る表現行為の内容に照らして一般的な公益が害されることを理由とする交付の拒否が広く行われるとすれば、公益がそもそも抽象的な概念であって助成対象活動の選別の基準が不明確にならざるを得ないことから、助成を必要とする者による交付の申請や助成 を得ようとする者の表現行為の内容に萎縮的な影響が及ぶ可能性がある。このような事態は、本件助成金の趣旨ないし被上告人の目的を害するのみならず、芸術家等の自主性や創造性をも損なうものであり、憲法21条1項による表現の自由の保障の趣旨に照らしても、看過し難いものということができる。」

4 コメント

  感動しました。何度も読み返しました。歴史に残る名判決です。上告代理人四宮隆史ほか、裁判長裁判官尾島明、裁判官三浦守、草野耕一 、岡村和美です。

判例

令和4(行ヒ)234  助成金不交付決定処分取消請求事件
令和5年11月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京原審東京高等裁判所