最高裁判所第三小法廷 令和5(行ヒ)335 警察庁保有個人情報管理簿一部
不開示決定取消等請求事件
令和7年6月3日判決 (原審、東京高等裁判所)
1 ポイントは何か?
国民主権、判断基準時、情報単位
2 何があったか?
Aが警察庁長官に対し、個人情報管理簿の開示を求めたところ、平成28年7
月、122通の文書につき、各欄の項目名の部分を開示し、各項目の内容の部
分には、当時の情報公開法5条3号又は4号所定の不開示情報が記録されてい
るとして、これを不開示とする旨の決定をした。Aは国を被告として、平成
30年3月、本件決定の取消を求める裁判を提起した。
長官は、Aほか1名から、それぞれ行政文書の開示請求を受け、平成30年1
月及び令和元年7月、本件各文書のうち30通につき、それぞれの一部を開示
する旨の別件各決定をした。長官は、令和4年4月、Aに対し、本件各文書に
つき、新たに一部を開示する旨の本件変更決定をした。Aは、新たに開示され
た部分に係る訴えを取下げた。
残りの本件不開示部分については、➀本件決定後、本件変更決定までに内容が
加筆または変更された文書は加筆変更後の文書を開示したものや、➁備考欄に
小項目があるのに、密接関連性を理由に備考欄全体を不開示としたものがあっ
た。
3 裁判所は何を認めたか?
地裁は、Aの請求を棄却し、Aが控訴したが、高裁は、Aの控訴を棄却し、A
が上告した。
最高裁は、➀本件決定の時点を判断基準時とすべきとし、➁国の主張立証がつ
くされていないとして高裁判決の一部を破棄し、高裁に差し戻し、その余の上
告を棄却した。
(裁判官林道晴補足意見。同渡辺惠理子、同平木正洋も同調。):国が区切っ
た範囲に、不開示情報と不開示情報に該当しない情報も含まれていると認めら
れ、かつ、両者を特定して区分することができるとはいえない場合には、原則
公開という情報公開法の趣旨にも照らし、当該範囲に不開示情報が記録されて
いるとの国の主張立証が成功していないとして、当該範囲の全体につき取消請
求を認容するのが相当。この場合、処分庁としては、区切り方を再検討した上
で、当該範囲の一部に限って開示決定をすることもできるものと解される。
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宇賀判事の意見のインカメラ及びボーン・インデックスの導入は今後の課題