【遺言の効力:遺言者が本文、日付、氏名を自書し、その27日後に弁護士が立ち会いのもと押印した自筆証書遺言書の効力が争われた事件】

1 ポイントは何か?

  遺言書は要式行為であり、自筆証書遺言は、全文、日付、氏名を自書し、押印しなければならない(民法968条)。その目的は、遺言者の真意を確保することにある。日付が真実の作成日ではない場合はどうか。本件判例は、原則は無効であるが、直ちに無効とはならない場合があることを認める。

2 何があったか?

Aは、平成27年4月13日、入院先の病院において、本件遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書し、退院して9日後の同年5月10日、弁護士の立会いの下、押印した。本件遺言の内容は、、Aの財産をB及びCらに遺贈ないし相続させるというものであった。Aは、同月13日、死亡した。

Dは、本件遺言書の日付は、真実の作成日ではないから無効であると主張した。

3 裁判所は何を認めたか?

  最高裁でD敗訴。原判決破棄、原審に差戻し。

  原則として、真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならない(最高裁昭和51年(オ)第978号同52年4月1 9日第三小法廷判決・裁判集民事120号531頁参照)。しかし、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがあるので、本件事実関係の下では直ちに無効とすべきではない。よって、原判決には判決に影響を及ぼすべき法令違反があるので破棄し、他の無効事由を検討させるため、原審に差戻す。

4 コメント

  遺言は要式行為である。公証役場で作成することが、その効力をより確かなものにする。

判例

平成31(受)427  遺言無効確認請求本訴、死因贈与契約存在確認等請求反訴事件

令和3年1月18日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻

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