【懲戒処分:水族館を経営する株式会社の課長代理2名が女性従業員らに対するセクハラで出勤停止の懲戒処分を受け、降格された事件】

1 ポイントは何か?


  会社の課長代理ら2名が会社の就業規則、セクハラ禁止文書に違反してセクハラを行ったとして、出勤停止の懲戒処分を受け、資格等級制度規程に基づき降格となり、最高裁判所は、会社には懲戒権や人事権の濫用はなく、出勤停止及び降格は有効であるとした。


2 何があったか?


  水族館を経営する株式会社Yでは、従業員の過半数が女性であり、また来館者の6割が女性であることから、社内でセクハラ防止キャンペーンをしていた。ところが平成28年ころ、課長代理2名(X1およびX2)が女性従業員2名(A及びB)に対する執拗なセクハラを行ったとして、出勤停止(X1につき30日、Ⅹ2につき10日)の懲戒処分を行い、降格(いずれも係長へ)した。
  X1およびX2は、懲戒事由を欠き、Yが懲戒権を濫用したとして、当会処分の無効確認と降格前の地位にあることの確認を求めた。 


3 裁判所は何を認めたか?


⑴ 原審 大阪高等裁判所 X1およびX2の勝訴 
X1およびX2の請求を認容した。 
X1およびX2のA及びBに対する言動は、Y社の就業規則とセクハラ禁止文書で禁止されたセクハラ行為に該当し、出勤停止等の懲戒事由に当たるが、Aから明確な拒否の姿勢が示されず、許されていたと誤信し、Yのセクハラ防止の方針を認識する機会がなく、Yから事前に警告や注意等を受けていなかったことから、出勤停止の処分を行うことは酷にすぎ、社会的に相当とは認められず、権利の濫用として無効であるとした。
⑵ 最高裁判所第1小法廷 X1およびX2の敗訴
大阪高等裁判所が下した原判決中X1およびX2の勝訴部分を破棄し、控訴棄却の判決を下した。その結果、X1およびX2の請求を棄却した第1審の判決が確定した。
X1およびX2は、課長代理としてY社の方針を当然知りうる立場にあり、Aから明確な拒否の姿勢が示されていなかったことを有利に斟酌することは許されないとして、YがX1およびX2に出勤停止の懲戒処分をしたことは社会通念上相当性を欠くとは言えず、懲戒権の濫用はなく有効というべきである。Y社の資格等級制度規程が懲戒処分を受けたことを独立の降格事由としていることは合理性があり、人事権の濫用もないので、降格も有効である。


4 コメント


  企業で、就業規則や関係文書でパワハラやセクハラを定義し、従業員に周知させ、違反があった場合には被害者が相談できる窓口を設け、その救済申立てにより審査会を開催し、違反者の懲戒処分や降格と結びつけて実効性を保つよう工夫がされているところが増えている。厚生労働省のホームページなどでも、その指針となるような記事がある。  

判例

平成26(受)1310懲戒処分無効確認等請求事件
平成27年2月26日 最高裁判所第一小法廷 決 (破棄自判)
原審  大阪高等裁判所